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Highlighting JAPAN

 

30数夜を踊り抜く町

岐阜県のほぼ中央に位置し、郡上八幡城の城下町として栄えた郡上八幡。この地で踊り継がれて400余年、30数夜に渡って繰り広げられる郡上おどりの魅力に迫る。

郡上八幡は、奥美濃の山々から流れ出る吉田川に沿って町が築かれ、町中には環境省が選定する名水百選の第一号として登録された宗祇水(そうぎすい)を始め数々の湧き水が点在し、道の両側には水路が敷かれ、「水のまち」としても知られている。吉田川の北側には、昔ながらの町家が数多く残されており、2012年に大手町・職人町・鍛治屋町・柳町・郡上八幡城を含む城山の一部が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

郡上八幡の夏を彩るのが、日本三大民踊の一つであり、国の重要無形民俗文化財にも指定されている「郡上おどり」である。今から約400年前の江戸時代、郡上藩主・遠藤慶隆が、領民の融和を図るため、盆おどりを奨励したことに始まり、特に盆の4日間は身分の隔てなく無礼講で踊ることから盛んになった。現在でも、会場に据えた屋形を取り囲むように地元民と観光客が一つの輪になって踊る形を保持しており、見るおどりではなく、踊るおどりと言われている。

開催期間は毎年7月中旬から9月上旬にかけての30数夜で、2018年は7月14日から9月8日まで31夜行われる。町内各所の縁日行事として踊るため毎日会場が変わり、ひと夏で市街地を一巡する。8月13日〜16日は盂蘭盆会(うらぼんえ)の催しとして夜を徹して踊り明かし、町はおどり一色となるという。おどりは優雅な曲調の「かわさき」や、郡上マンボとも言われるテンポの速い「春駒(はるこま)」など全部で10種類。いずれも見よう見まねで踊れる簡単なものである。期間中には、郡上おどり保存会の講師がおどりの基本や上手に踊るコツなどを伝授する講習会も開かれる。

「近年の参加者数は期間全体で約30万人、地元民と観光客の割合は3:7くらいです。日本の民俗文化を気軽に体験できるとあって外国の方々にも人気が高く、講習会に参加される訪日観光客も年々増えている印象です。服装は自由ですが、下駄を打ち鳴らして踊るのが郡上おどりの醍醐味ですから、下駄と浴衣をレンタルしたり、購入したりする方も多いようです。際立っておどりの上手い人には郡上おどり保存会から免許状も交付されます」と郡上八幡観光協会の岡崎玲子事務局長は話す。レジャーの多様化に伴い、若者のおどり離れが進んでいるとも言われるが、郡上八幡では小学校の総合学習や運動会で郡上おどりを取り入れるなど、市を挙げて様々な取組を推進し、地元の若者を取り込みながら歴史ある民俗文化を守り続けている。

郡上おどりの楽しさを地元以外の人にも広く知ってもらおうと、郡上八幡観光協会は毎年東京や京都でのイベントに参加協力するほか、不定期ではあるが、海外公演として地元のフェスティバルなどに参加したり招待されたりすることもある。また、伊勢神宮の神嘗祭に合わせて三重県伊勢市で行われる神嘗奉祝祭では、徳島の阿波おどりや沖縄のエイサーとともに毎年おどりを奉納している。「今年で25年目となる東京のイベント『郡上おどりin青山』は毎年6月に行われ、2日間で来場者が1万人を超えるなど、大きな盛り上がりを見せています。実際の郡上おどりと同じように、誰でも参加できる気軽さが人気のようで、これをきっかけに本場・郡上八幡での郡上おどりに参加してくださる人も増えています」と岡崎事務局長は手応えを語る。今後も日本一の盆おどりを目指し、イベントや公演などを通して国内外により広くアピールしていく計画だと言う。おどりとともに始まり、おどりとともに終わるという郡上八幡の夏はこれからも人々を惹きつけるだろう。