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Highlighting JAPAN

日本の観光需要を高める取組

2017年、海外から日本を訪れた人の数は約2869万人。この人数をさらに増やすべく、観光庁では様々な施策を講じている。田村明比古長官(2018年7月31日退任)に日本の観光の現状と今後の展望を伺った。

現在、日本の観光はどのような点をアピールしているのでしょうか?

欧米を始めとした様々な地域では、日本の印象は富士山、桜、寺社仏閣といったステレオタイプな印象が抱かれています。しかし、日本には非常に豊かな自然があり、気候は亜寒帯の北海道から亜熱帯の沖縄県まで幅広く、その土地ごとに特徴的な料理や伝統的なお祭りなどがあります。そうした多様な姿と楽しみ方をより一層アピールしようとしています。

具体的な取組の一つである「Enjoy my Japan グローバルキャンペーン」では、日本が魅力的な旅行先であることを様々な手段で発信しています。その一環で配信しているコンセプトムービーは、豊かな自然やアウトドアアクティビティ、温泉、食事など、日本の様々な魅力が伝わると各国でも好評です。

少し前まで、日本は文化財や自然といった優れた観光資源を持ちながら、旅行者に対して魅力を伝え切れていない部分がありました。例えに挙げられるのがビーチです。日本は国土面積が世界61位と決して広くない国ですが、海岸線の長さは世界6位を誇っています。これを夏の海水浴だけではなく、スポーツやコンサート、映画上映などに活用する方法や、海辺の散歩が楽しめるように遊歩道を整備するといった観光への活用も検討しています。

この夏のインバウンド対策をお聞かせください。

一つは、美術館や寺社などの文化財の開館時間の拡大です。これは、夜に楽しめるスポットを増やしつつ、朝、涼しい時間から出掛けられるようにすることを目的としています。また、各地で盛んな夏祭りにも注目しています。情報発信を強化して地方への誘客を図っています。

また、外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety tips」の提供も一つの取組です。英語、中国語(簡体字/繁体字)、韓国語に対応しており、日本における緊急地震速報や津波警報といった災害情報の発信や、熱中症対策、外国人を受け入れ可能な医療機関の情報などを提供しています。

2020年の訪日外国人観光客4000万人を政府目標に掲げていますが、これに向けた取組と、今後の展望をお聞かせください。

訪日外国人観光客の数は2013年に初めて1000万人を超え、2017年は2869万人、2018年の5月も前年同月比15〜16%増と、今なお着実に増え続けています。この勢いを維持していくには、観光客の方々がより快適な旅行ができる環境を整えなくてはなりません。例えば、空港からの電車に無料Wi-Fi環境を備えて情報を得やすくする、英語が通じない小規模な店舗に多言語音声翻訳システムを取り入れるといったことです。宿泊施設に対しても、和式トイレの洋式化や、テレビの国際放送設備導入に補助金制度を設立するなど、訪日外国人のストレスフリーな環境づくりを推進しています。

こうした取組は、2年後の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてというだけではありません。日本の人口減少が進んでいく中、地方でも一定の経済成長を維持するには交流人口を増やしていく必要があります。観光業は数少ない成長産業で、経済を支える柱の一つになると考えています。2020年は単なる通過点と捉え、今後も様々な取組で日本をより魅力的な旅行先とし、それをアピールしていきます。