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Highlighting JAPAN

 

 

世界のファッショニスタが認めるファッションブランド

日本ブランド「sacai」が世代を超えて世界の注目を集めている。デザイナー兼オーナーの阿部千登勢さんにその世界を聞いた。

「sacai」は5型のニットから始まったブランドで、1999年に設立された。地道にクリエイションを重ね、2004年にパリで初の展示会を開催。2009年にはメンズラインをスタートさせるとともに、同年、阿部千登勢さん自身が初の日本人としてモンクレール※のデザイナーとして起用されることで、sacaiのブランドは人々に知られることとなる。また、2011年にはパリコレでショーを開催した。以来、パリのファッションウィークにはショーを行い、積極的に海外進出に力を入れている。2015年には、訪米中の安倍首相を招いたホワイトハウスの公式晩餐会に阿部さんが招待されるなど、日本のファッションを語る上で欠かせないブランドに成長した。国内では東京・青山に路面店を構え、映画祭などでは女優たちがsacaiのドレスに身を包む。

sacaiはブランド創設当初から「日常の上に成り立つデザイン」というコンセプトを変わらずに大切にしている。阿部さんは、sacaiが発信する世界をこう語る。
「私が作る服は、自分自身が着たいと思う服です。どんなに革新的なアイディアがあって形になったとしても、実際に人に着てもらえるものでなければ意味がないと思っています。それが、ブランドコンセプトの根底に広がる価値観です。特定の機会にとどまることなく、一つの服を日々の様々なシーンで着てもらいたい−−−常々、そう考えながら、服作りをしています」

sacaiのものづくりに対する哲学は、「ハイブリッド」と表現されるデザインや、積極的に行っている他ブランドとのコラボレーションにも垣間見ることができる。例えば、スエットとプリーツなど、対照的な素材や異なる服のパーツを組み合わせて新たなシルエットを作り出したり、また、2015年にはナイキと、2017年にはザ・ノースフェイスとのコラボレーションを発表したりした。コラボレーションした限定コレクションは、世代を超えて人々の心をつかみ、完売した。
「他のどこでも見たことのない、sacaiにしかできない既成概念にとらわれないものづくりを大切にしています。日本人は新しい文化や、ストリートの要素をファッションに取り入れることに抵抗があまりなく、そういう工夫が得意なように思います」と語る。

sacaiが発信する服が多くの人に共感される理由として、「現代を生きる多くの女性が、様々な役割を担って生活しているから」と阿部さん自身は分析する。
「私自身はデザイナーでもあり、会社の経営者でもあります。家に帰れば母親であり、一人の女性です。世の中の女性も私と同じように、一面的ではなく様々な顔をもって、様々なシーンで生活している。だからこそ、私の作る、私が着たいと思う服や、sacaiの世界観に共感していただけているのではないかと思います」

阿部さんという一人の女性を通じ、“今”の女性の生き方そのものを体現しているのが「sacai」の魅力とも言える。だからこそ、流れの早いファッション業界を、たくましくしなやかに泳いでいくことができるのだろう。ファッションを通して、日本の“今”を世界に発信していくsacaiはこれからも注目を集め続けることだろう。

(脚注)
※モンクレール(MONCLER)はフランスの高級ダウンウェアブランド。