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Highlighting JAPAN

新しい茶の道

緑茶に精通するホリー・ヘルト氏とアレックス・サンソン氏は、カフェ「Chiki Tea」とオンラインストアを通して、日本のお茶愛好家たちに新たなお茶の楽しみ方を紹介している。

ホリー・ヘルト氏とアレックス・サンソン氏は、カフェをオープンし、最高の緑茶を提供するという明確な目的を持って2013年に九州に来た。

世界でもっとも緑茶を愛飲する国である日本で、そうしたことに取り組むのは非常に難しい考える人もいるかもしれない。それでも、アメリカ人のヘルト氏とイギリス人のサンソン氏が大分県中津で立ち上げた風変わりなカフェは、「コップの中の嵐」では済まない大きな影響を及ぼすことになった。

2014年にオープンしたChiki Teaは、伝統的な日本のお茶処でよく見られる堅苦しさはない。生産地にこだわって仕入れた抹茶やかぶせ茶などのお茶は、洗練さと温かみが醸し出されたカフェの中で、湯呑み茶碗ではなくデミタスカップで供される。また、和菓子の代わりに、チョコレートブラウニーやスコーン、チーズケーキが出される。

「私としては、日本茶を取っつきにくいものではなく、誰もが手に入れることができて、楽しいもの、つまり生活の喜びとして捉えて欲しかったのです」とヘルト氏は言う。彼女は、欧米諸国を対象とした中国茶の販売促進に携わっていた10年以上前に、ニューヨークでカフェをオープンすることを考えていた。

ヘルト氏が「Chiki」というカフェの名前を思いついたのはちょうどその頃だったが、Chikiとは「子供のやり方」という意味になる漢字二文字をかけ合わせたものだと彼女は説明してくれた。

「つまり、誰でも自分の中に子供の部分があるわけで、Chiki Teaの役目はそうした内なる子供に近づく手助けをすることなのです。ここではそのため、型にはまらない、一風変わった急須でお茶を入れ、日本茶と相性が良い西洋風のお菓子を提供しています。こうすることで、お茶を味わうための敷居が低くなるのです」

ヘルト氏の話によると、彼女のお茶好きの始まりは父親の仕事の関係で日本に暮らしていた頃、まだ子どもだった彼女に、ソーダ嫌いの母親から勧められてからのことだという。

2008年に、彼女はグラフィックデザイナーをしていたサンソン氏と出会ったが、彼は日本の伝統飲料にのめり込むヘルト氏の情熱に感化された。「緑茶の風味には一目惚れした」とサンソン氏は言う。

そうした思い入れが募った二人は2013年に会社を設立して、イギリスとアメリカの消費者に日本茶をインターネットで販売することを始めた。

この事業の成功で自信を得たヘルト氏とサンソン氏は、日本有数の茶葉生産地にほど近い場所でカフェをオープンするという、さらに挑戦的なビジネスに取り組むことを決意した。

長年茶道を習い、自称「ティーハンター」であるヘルト氏は、「この地に来て、極上品質のお茶を見つけることが自分たちの使命でした」と語る。「商品の裏側に『緑茶』と記載されているものは、欧米諸国にたくさんあります。しかし、そうした但し書きは必ずしも品質や味の良さを保証するものとはなりません。日本には数多くの品種があり、それらの多くは品質が非常に優れているに違いないと確信していたのです」

ヘルト氏は「お茶狩り」のため、いつも彼女の愛犬ジャスミンとともに、九州の農村部に赴く。そうした時には、品評会での受賞歴を誇る福岡西部・八女地域にある星野製茶園など、素晴らしいお茶を見つけることがある。

星野製茶園はヘルト氏が、人気、実力ともに備わった、「ロックスター」級と表現する、最初の生産者となった。ヘルト氏はサンソン氏がイラストを手がけた『緑茶は新しいブラックティー:日本茶の夜明け』という日本茶に関する本を著しているが、彼女によると「そうしたロックスター級の生産者の茶葉から、類い稀な味わいを引き出すには、本当の意味で熟練した技が求められる」という。「経験豊富な職人ならば、一定の地域で生産されたお茶の特徴をどのようにして引き出すのか、たちどころにわかるのです」

ヘルト氏とサンソン氏はこれまでに数多くの高品質の茶葉を仕入れてきたが、Chiki Teaのお客さんたちは、八女産の茶葉を使った「シルク」とネーミングした抹茶がかなりのお気に入りである。

「若い人たちは茶葉から淹れるお茶をそれほど飲まないとすぐに気づきました。抹茶の需要が非常に高く、供給に追いつかないほどです」とサンソン氏は語る。「カフェをオープンしていなければ、こうした事実を知ることは決してなかったでしょう。色々な面で、短期間に多くのことを学びましたが、そこから大きな恩恵も得ることができました」

現在、二人は日本の他地域でも彼らのブランド進出を目指している。「Chikiの次店舗をオープンする際には、メニューの食べ物を増やすつもりです」と、ヘルト氏は言う。チキのティーメニューにあるケーキなどは、すべて中津の中心街に建てたベーカリーで彼女自身が焼いている。「それでも、私たちが大好きなのは高品質のお茶なので、これからも最高級のお茶を見つけ出し、誰でも手に入るよう提供することに重点を置いていきます」