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Highlighting JAPAN

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女性の活躍

福島有佳子

最後の一仕上げ(仮訳)

福島有佳子氏が作る本物そっくりの人工パーツと彼女のカウンセリングが、人々に失われた体の部位を与え、社会に思い切って復帰する勇気を与えてくれる。


福島有佳子氏は人工ボディ―美容用としての人工パーツの考案者で、彼女の作り出す皺や血管、指紋はとても自然に見えるので、それらは本来の体の部位とほとんど見分けがつかないほどだ。彼女の輝かしい業績に対して、日本の内閣府の一組織である内閣府男女共同参画局は2014年の女性のチャレンジ賞を授与した。この賞は、社会における男女共同参画の促進を図ることを目的として、起業、NPO活動、地域活動等の分野で活躍する女性および女性グループを表彰するものである。

このような福島氏の進路は計画的に立てられていたわけではなく、病院の待合室に現れた、夏にも関わらず帽子を被って分厚いマフラーを巻いた一人の男性との出会いがきっかけであった。「私は彼のもとに歩み寄って尋ねました。『暑くないのですか?なぜマフラーを巻いているのですか?』と」。彼女は当時かなり大胆であったことを思い起こす。

そこでわかったことは、その男性は鼻と両方の耳を職場での爆発事故で失い、その事故によって重度の火傷を負ったということだった。「日本はとても閉鎖的であるため、私たちは物事を隠すのです」と福島氏は言い、自分の手が無いことを人に気付かれはしないかと外出を恐れる人や、自分の足が無いことを打ち明けることを恐れて結婚をためらう人の気持ちについて説明する。「実際には日本人の多くがこのようなことついてセンシティブに捉えています」。

彼女はその男性に「あなたが少なくとも花粉用マスクを身に付け、マフラーを巻かずに済むものを私が作りますよ」と言い、自分が助けになると伝えた。それから、ビジネススクールのホテルサービス専攻を卒業した21歳の彼女は、最初の試みとして、彼女が探し出すことのできた柔軟性のある物質を寄せ集めて、ペアの小さな塊に過ぎない耳を作った。現在40代も半ばを迎えた彼女は、両面テープからいろいろな接着剤に至るまで様々なものを駆使しながら人工パーツを接合するために試行錯誤をしてきたことを思い出して顔をしかめる。しかし、よりラクに呼吸することができたことにとても喜んでいる男性の姿を目にして以来、彼女は幼少時代得意だった芸術や彫刻の経験を活かし、造形粘土で作った本物そっくりの両耳のセットを彫り、それらを可能な限り本物に近づけるよう塗装することに応用したのだ。次第に彼女の才能は口コミで広まり始め、驚いたことに、注文が舞い込むようになった。

ある開発企業が福島氏の作品をすぐに販売し始め、注文が山のように増えたが、あっという間に会社がなくなり、資金がなくなった。彼女はローンを組んで未処理分に対応するため4年間働き、美容用の人工指、鼻、目、胸、手、足―彼女のクライアントが必要なものであれば何でも―を作ることを独学し、色づけされた高品質シリコンを形作って、1200種の異なる肌のトーンから個々に合った色をマッチさせる技術を修得した。

新しい注文が入ってくる度に、福島氏はそれらの値段を上げずに大きく下げていった。「手を失った人、あるいは事故で足を失くした人は、仕事も失っている場合が多いので、経済的に苦しいのです」と彼女は説明する。

1999年、福島氏の小さな会社は大阪に拠点を置いている義肢装具のメーカーとして定評がある川村義肢株式会社に買収された。彼女は自分のオフィスと作業場を川村義肢の中に構えている。福島氏は関心を高めるためにメディアに登場する機会はあるが、彼女は自分の作業に集中することを好むという。「私には十分な時間がないのです。クライアントは毎日やってきます。そしてそのうちの何人かは2ヶ月も待つことになるのです」。

伸張性や補強性の高い弾性素材で作られ、特別接着剤に守られた人工ボディはとても頑丈で、それでいて柔らかな付け心地であるため水泳や温泉でも使用することができる。それでもなお、心理カウンセラーでもある福島氏は、人工ボディを使っている人々が自分のありのままの姿を認められるように助けてあげられないかと配慮し続けている。「違いを認め合える快適な環境がこれからたくさん増えていけばいいなと思っています」と彼女は言う。

 



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