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Highlighting JAPAN

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防災

極めて高い視点

自然災害に対応するJAXAの技術(仮訳)



人工衛星のうち、災害監視、環境監視、資源探査などを目的としたのが地球観測衛星だ。その中でも主に地表を観測する衛星として、日本では、今までに「ふよう1号」(1992年4月~98年10月)、「だいち」(2006年4月~11年4月)、そして「だいち2号」(14年6月~)の3機が打ち上げられた。

人工衛星から地球を見るメリットは、何といっても一度に広範囲の観測が可能なこと。東日本大震災の被災地の全貌を写し出すような画像は、衛星でなければ不可能だ。地球上を周回しているため、同じ現場を何度も繰り返し観測し、変化を検討することもできる。

最新鋭の「だいち2号」は、自ら発信し、地表から跳ね返ってきた電波をとらえる「レーダー観測」に特化(前の2機は、光をとらえるカメラも搭載)したうえで、その精度を大幅に高めた。「例えば、地震で倒壊した高速道路が確認できるくらいの性能なんですよ」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の戸田謙一衛星利用推進センター防災利用システム室室長は言う。

地震などの災害は、昼間、好天時に起こるとは限らない。レーダーの特徴は、夜間でも、地上が厚い雲に覆われていても地表が観測できることだ。さらに、発信する電波は、日本の地球観測衛星独自のLバンドという低い周波数のものを採用。それにより、草や木を透過して、地面を直接見ることも可能にしている。国土の広範な部分を森林が占める日本の自然環境に適合させるため、早くから技術開発に取り組み、実用化に漕ぎつけたものだ。

では、観測衛星は、自然災害に際して具体的にどんな役割を担うのだろうか? 災害発生時にまず求められるのは、被害状況の正確な把握である。例えば、東日本大震災発生時には、当時運用中の「だいち」が被災地の状況をカメラで撮影し、いち早く地上に送った。それを見ることで、津波によってどの地域がどこまで浸水した、海上に流出した浮遊物がどこにどれくらいある、といった情報を即座に認識することができた。宇宙から送られた画像が、迅速な救援や復旧、2次災害の防止などに貢献したのである。また大災害ともなれば、復興には長い年月を要する。その状況を定期的に見ることで、進捗具合の把握、より効果的な計画立案に役立てることも可能になるだろう。

JAXAは、こうした人工衛星を活用した災害対応に関して、内閣府(防災担当)をはじめとする防災機関との連携体制を構築している。関連する政府機関や自治体などからJAXAに対して、「この地域の被害状況が知りたい」という要求が出された場合、それに応じてできるだけ速やかに「だいち2号」による観測を行い、データを提供するのである。

協力は、国内だけにとどまらない。全世界の宇宙開発機関、防災機関で結成する「国際災害チャータ」では、加盟国から要請があった場合、それぞれの持つ衛星で観測を行い、データをその国の防災機関に提供する体制が組まれている。また、特に風水害が多く発生するアジア・太平洋地域では、日本の提唱による「センチネルアジア」という同様の仕組みが稼働中だ。

今後の課題について戸田氏は、「これまでの我々の活動は、主に災害後の対応に関するもの。ハザードマップ作成のサポートなどはあるものの、『被害を未然に防ぐ』という点では、まだ貢献は十分とは言えません。定期的に監視することによって微妙な地形の変化などを発見、予見し、火山の噴火や突然の土砂崩れの予兆をとらえるといった、予防の機能をもっと高めていきたいです」と語る。



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