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Highlighting JAPAN

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地方の活性化

地域の特産品を使った環境対策(仮訳)

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香川県は「うどん県」と自ら名乗るほど、うどんで知られる県である。数年前、このうどんを使ったまちおこしに大成功し、全国からうどんを食べるために多くの人々が香川県を訪れている。

香川県では、このうどんを食べるだけではなく、リサイクルにも役立てようと動き出している。うどんを全く無駄がでないレベルまでリサイクルするこの循環システムは、これからの食品廃棄処理のモデルケースとして注目される。「うどんまるごと循環プロジェクト」と名付けられたこのシステムについて、ハード部分の開発を一手に引き受ける「ちよだ製作所」代表取締役の池津英二氏と、うどんまるごと循環コンソーシアム会長の角田富雄氏にお話を伺った。

「このプロジェクトを始める前に、私たちが注目したのは、割り箸でした。かつてうどん屋で客が使った割り箸は、すべて捨てられていました。これを集めてパルプ製紙にリサイクルしようという活動を開始したんです」と角田氏は話す。「その活動を通じて、実はうどん自体の廃棄量も大量であることを知りました」

一例をあげると、香川県の冷凍うどんを大量に生産する会社では、出荷規格に沿わないなどの理由から多い時で年間約1500トンものうどんが廃棄されていた。このプロジェクトでは、そうして廃棄されるうどんを細かくし、酵素、酵母と水をあわせてエタノール発酵させる。

池津氏と角田氏によると「全国各地でさまざまな素材からエタノールを採取する試みがなされていますが、エタノール採取量が少ないので、人件費や設備費を考えると継続することがとても難しい。うどんを原料とした場合、主にデンプンで構成されているため、発酵が楽で設備も安価でできるというメリットがあります。採取したエタノールはうどんを茹でる熱源に利用できます」とのことだ。

エタノール採取後のうどんの残りカスも無駄にせず、メタン発酵装置に入れてメタンガスを作っている。このメタンガスは、前出のエタノール発酵装置の温度を一定に保つためのボイラー燃料や、発電に使用されるという。

「エタノール、メタンガスを採取しても、実はまだ残りカスが出ます。それは液肥化装置という肥料を作る機械で液体有機肥料にし、うどんの原料となる麦畑や一緒に食されるネギ畑に撒くのです。液体肥料はかさばるなど保存の点で弱点があるため、今はこれを特殊技術で固形にするプロセスを完成させている所です」

カス一片たりとも無駄にしないこの循環システムを、池津氏と角田氏はうどんだけではなく、食品廃棄物処理全体に広げて行くことを考えている。

「エネルギーを使って処理していた廃棄物からエネルギーを採る、という発想の転換です。私たちは未来の安定したエネルギー供給にこのシステムが役立つことを確信していますが、現時点では企業が個々に始めるには費用やリスクを考えると敷居が高い。私たちも県や市の協力があったからこそ、ここまで来ることができました。ソフト、ハード両面での行政のサポート、企業の努力、市民の意識改革の3人4脚で、地球にやさしいエネルギー循環社会を実現することが必要だと思います」

地元の資源を徹底的に活用したこの環境対策は、最先端の成功事例として全国へと波及していくことが期待される。



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