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Highlighting JAPAN

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地方の活性化

若者のアイデアで地元の食文化をPR(仮訳)

松本市

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日本各地の鉄道駅で販売されている「駅弁」は、「旅のお弁当」である。移動中に列車内で食べることができるよう工夫されたコンパクトな弁当箱の中に、地方色豊かな味覚が盛り込まれた、日本人が愛する食文化の一つでもある。

長野県松本駅で2013年から販売されている「城下町のおごっつぉ」(「おごっつぉ」は松本地方の方言で「ごちそう」の意味)は、「松本の農産物や食文化を全国に発信したい」という思いから、農協、学生、弁当業者が連携して創りあげたユニークな駅弁。若者の力を借りて地方の農業や食文化の活性化に取り組んだこの企画について、JA松本ハイランドの小原太郎氏にお話をうかがった。

「地元の農作物をもっと全国に知ってほしいという思いは、農家も農協もかねてから抱いていました。その漠然とした思いが具体化したのは、松本市および長野県からの提案と協力があったからです」

こうして、駅弁の開発は「おいしい信州ふーど(風土)」松本域協議会の事業として具体的に動き出した。農協と創業100年以上の地元の老舗弁当屋「イイダヤ軒」、駅弁を販売する駅ビルMIDORI、パッケージ資材業者の折協市場店、そして公募で集まった松本大学の学生ボランティア12名がチームとなり、松本、そして地元産のおいしい農産物のPRに最適な食材、味、パッケージングや売り方を模索した。

「若者は頭が柔軟で怖いもの知らずです。組織の中で働いている私たちや、老舗弁当屋の発想というのは、どうしても先をみてリスク回避に走る傾向があります。予算や技術を現実的に考えれば夢物語のようなアイデアもたくさんありましたが、学生たちが提案する駅弁はどれもユニークで、松本への愛情に溢れていました」

ワークショップ、松本駅利用者へのアンケート、数々の試作を経て形となった「城下町のおごっつぉ」は、八角形2段重ね容器に14種類の地元のおいしさが美しく並び、1200円と他の駅弁より高価ながら、毎日数時間で売り切れてしまう人気商品となった。

「学生たちも売り場に立ち、声を出して一生懸命自分たちの駅弁を売ってくれました。大人たちは、やはり若者が一生懸命やっていることを応援したいという気持ちがあります。駅弁のおかずにしても、デザインにしても、『学生さんたちが頑張っていることだから』と職人さんたちが無理を聞いてくれて、有難かったです」

当初は2013年末までの限定発売のはずだったが、その人気から販売は延期を重ね、今後も松本駅の定番駅弁として販売されることが決まった。

「販売継続のためにマイナーチェンジが必要な部分もあります。駅弁でありながら『旬』を追及しましたので、次の季節には何の食材を使うかなどまたみんなで集まって話し合わなければなりませんが、より多くの地元農産物を知ってもらうためには良いことだと思います」と小原氏は語る。

日本人に馴染みの深い駅弁に若者のアイデアを取り込み、産官学が連携してヒット商品を生み出したこの取り組みは、これからの日本各地の地域活性化にたくさんのヒントを与えてくれるのではないだろうか。

 



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