Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan April 2014>Washoku

Highlighting JAPAN

前へ次へ

和食

日本を代表する農業地帯(仮訳)

世界で成功する北海道十勝ブランド

English



十勝は、北海道の東南部に位置し、帯広市を含む19の市町村で構成された地域である。広大な十勝平野はきれいな空気と水、年間2,000時間を超える日照時間、そして農家1戸あたりの耕地面積は全国平均の約18倍の39.4haを誇り、日本有数の食料生産基地として小麦や豆類、じゃがいもなどの大規模な農業が営まれている。さらに農業に関連する大学、試験研究機関、企業が集積し、先進的な研究が進められている。

十勝の代表的な作物の一つに十勝川西長いもがある。2012年度には21,405tを生産し、輸出量は過去最高の3,000t、額にして9億円となった。

十勝川西長いもの海外輸出が始まったのは1999年。帯広市役所で農業の成長に関する企画調整を行う池守康浩氏によると、「もともとは豊作貧乏になったことがきっかけ」だという。長いもの生産量が順調に増大した結果、豊作の年の供給量が国内での需要を大きく上回ってしまい、価格が暴落したのだという。また、核家族化が進む日本では、大サイズの長いもは使いきることができないと敬遠され、低価格化しつつあった。

そこで、余剰分を台湾に輸出することで、国内価格の調整を目指すようになった。台湾では、長いもが「山薬」と呼ばれ、薬膳に用いられているという情報を得たためだ。地場産のものより色が白く、味もよい十勝の長いもは、台湾で高い評価を獲得した。しかも日本のようにすりおろして食べるのではなく、煮物などに入れる食材としてよく利用されるため、国内では価格が安い大サイズの長いもが好まれた。

こうして国内価格を安定させつつ、輸出量を年々増加させることに成功し、2007年からはアメリカにも販路を拡大した。2008年には、川西長いも選果場が、土もの野菜工場としては世界初となる食品衛生管理の国際規格HACCP(危害分析重要管理点)認証を取得。現在では、農協に出荷する野菜について生産履歴のデータベース化はもちろん、生産現場での工程をチェックリストで管理し改善につなげる十勝型GAP(農業生産工程管理)や残留農薬自主検査といった十勝独自の取り組みを、すべての農家が実施し、安全品質管理を徹底している。

池守氏は「安全なもの、安心なものに特化していくことで十勝だけの価値が生まれる。そうでなければ、農業が盛んな他の地域と変わりませんから」と取り組みの理由を明かす。実際に、2011年の東日本大震災後も、風評被害の影響をほとんど受けることなく輸出を順調に続けられたのだという。

十勝では2011年から「フードバレーとかち」という理念を地域活性化の旗印に掲げている。(1)十勝で安全・安心な農林水産物を生産し、(2)十勝で加工することで付加価値をつけ、(3)十勝のブランド力を活かして国内外に販路を拡大していく。この3つを柱に地域を豊かにしていこうという構想である。「フードバレーとかち」に関する情報発信や企画の取りまとめを行う帯広市役所の吉田誠氏は、今後の展望について、「3つの柱を成長させ、質を高めていくことに尽きる」と語る。「そうすることで十勝に住む人たちに、自分たちの土地に誇りと愛着を持って暮らしてほしい。そんな大きな想いがフードバレーとかちに込められているのです」と続けた。

 



前へ次へ