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Highlighting JAPAN

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特集新たな視点で眺める東京

東京の別天地(仮訳)

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東京はビルが林立する町だけではない。少し足を延ばせば、水と緑に恵まれた大自然を満喫できる。また、東京には世界的に貴重な自然が残る世界自然遺産もある。ジャパンジャーナルの澤地治が報告する。


東京の大自然を散歩:奥多摩

「ここは、本当に東京とは思えないですね!先週もここに来たのですけど、とても良いところだったので、今日は友達3人を連れてきたのです」

水が勢いよく落ちる奥多摩の「ネジレの滝」の前で、リュックを背負い、トレッキングシューズを履いた60代の女性が元気に話す。4人は、新宿駅からJR青梅線で終点の奥多摩駅まで約2時間電車に乗り、そこから、車を使わずに2時間半かけて、川沿いの林道を滝まで歩いてきたのだ。

ネジレの滝の近くには、水が3段に落ちる落差約18mの「三ッ釜の滝」、落差約23mの「大滝」という二つの滝があり、これらの滝巡りのための道「海沢三滝コース」が整備されている。コースの直ぐ側を流れる渓流、そして、苔むした岩々が非常に美しい。ここでは、川に飛び込んだり、滝を滑り降りたりするキャニオニングと呼ばれるアクティビティも行われている。

梅沢三滝コースだけではなく、奥多摩エリアの拠点となるJR奥多摩駅からは、多摩川とその支流沿いに、子どもから高齢者まで楽しめる数多くの登山やハイキングコースがある。例えば、JR奥多摩駅から奥多摩湖までの約9kmのハイキングコース「奥多摩むかし道」だ。奥多摩むかし道は、もとは江戸時代に整備された道で、道沿いには江戸時代の信仰を伝える神社、地蔵なども残っている。道からは多摩川の流れも見渡せるが、特に、「しだらく橋」と呼ばれる吊り橋から眺める多摩川の渓谷は見事だ。ただ、歩くだけで揺れる橋なので、かなりのスリルも味わえる。

奥多摩むかし道の終点手前にある「青目立不動尊休み処」は、築100年を超える民家を改築した休憩所で、手作りのソバやお餅が食べられる。ここからは奥多摩湖が眼下に広がる素晴らしい眺めを堪能できる。

「日本人だけでなく、アジアや欧米からの観光客がむかし道を歩いて来ます。先日もインターネットで見つけたと言って、香港から女性が一人でここに来ました」と青目立不動尊休み処の男性従業員は言う。「自然と静かに接するには奥多摩が良いという人は多いですね。ただ、秋は紅葉が素晴らしいので、奥多摩もたくさんの人で賑わいます」


東京の世界遺産:小笠原諸島

太平洋に浮かぶ大小30余りの島で構成されている小笠原諸島は、「日本で一番遠い島」と言われる。自然保護の観点から空港は建設されず、東京から船で約25時間かけて行くしか方法がないからだ。しかし、小笠原諸島は、それだけの時間をかけて訪れる価値のある場所だ。

小笠原諸島の価値は、その自然にある。それは国際的にも認められ、2011年6月に小笠原諸島はユネスコ世界自然遺産に登録されている。小笠原諸島の自然の特徴の一つは、数多くの固有種が見られることだ。小笠原諸島は、その誕生以来、大陸と陸続きになったことがないので、現在、小笠原諸島に定着している生物は、鳥、風、海流、流木にのって、島にたどり着いた生物の子孫だ。それゆえ、独自の進化の道を歩んだ固有種が生息しており、「東洋のガラパゴス」とも呼ばれている。また、絶滅の危険性があるクジラ、鳥、カメなども小笠原諸島で見ることが出来る。

このように恵まれた自然環境の小笠原諸島では、エコツアーが盛んだ。例えば、夜の森で緑に光るキノコ「ヤコウタケ」や、天然記念物に指定されている固有種の「オガサワラオオコモリ」を観察するナイトツアー、ザトウクジラやマッコウクジラのホエールウオッチング、野生のイルカとともに泳ぐドルフィンスイムなど様々なツアーが用意されている。もちろん、釣り、スキューバダイビング、シーカヤックなどのマリンスポーツも楽しめる。

島の平均気温は23度と温暖で、1年中泳ぐことは可能だが、5月から11月が海水浴のベストシーズンである。小笠原諸島(父島)への船は、ほぼ一週間に1便だ。人が住んでいるのは父島(約2000人)と母島(約500人)のみである。野外でのキャンプは禁止されているので、宿の予約が必要となる。


坂の町、東京(仮訳)

乃木坂、三宅坂、団子坂…、東京都心には、名前が付いた坂が700以上存在すると言われている。それらの坂の名前は江戸時代(1603-1867)に名付けられた坂も少なくない。由緒ある坂には、標識が建てられ、その坂の名前の由来が説明されている。

坂の名称として多いのが、富士山を見ることが出来る坂ということで名付けられた「富士見坂」で、都心に約20ある(この中で、今、富士山を見ることが出来る坂は2箇所。東京から富士山は100km程離れている)。

東京都心の坂の中で、有名な坂の一つが新宿区の神楽坂だ。神楽坂は地名にもなっている。その由来は、神楽を演奏した坂であるから、あるいは神楽の音が聞こえてきた坂であるからなど諸説ある。神楽坂の途中にある、善國寺は江戸時代末期から多くの参拝客で賑わい、神楽坂周辺は繁華街として発展する。現在でも神楽坂周辺には、石畳の風情のある路地沿いに、日本料理を食べながら芸者の芸を楽しめる料理屋も残っている。

江戸時代や明治時代(1869-1912)の雰囲気が残る町として最近、人気を集めている谷中・根津・千駄木エリア(文京区と台東区)にも数多くの坂がある。中でも、「夕焼けだんだん」と名付けられた坂(階段)は、文字通り、美しい夕焼けを見ることが出来る坂として知られる。夕焼けだんだんを下ったところにある商店街「谷中銀座」は、テレビや雑誌でしばしば紹介されている昔ながらの商店街で、お菓子屋、魚屋、肉屋などが並び、多くの買い物客で賑わう。日本人の庶民の生活を知るにはうってつけの場所だ。

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