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増永眼鏡の先見の明(仮訳)

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ギャビン・ブレアが、福井県で斬新な高級メガネを製造する増永眼鏡株式会社を訪れた。

増永五左エ門氏は、20世紀初めに、人々が農業で得る収入を補い、次第に豊かになっていく他の都市から遠く離れた日本海沿岸に位置する辺鄙な農村地域をもう少し豊かにするために、福井には産業が必要だと考えた。そこで彼は、メガネ製造の2大中心地である東京と大阪から腕の立つ職人を一人ずつ招き、地元の職工の指導に当たらせたのである。メガネ産業は花開き、現在では、日本で製造されるメガネフレームのうち、97%が福井県産だ。

増永氏は、自らの会社である増永眼鏡株式会社を設立しただけでなく、新たに指導を受けた職人たちで構成するグループの独立もサポートし、最終的には地元に何百もの事業を誕生させた。

「福井でメガネの製造を開始した当時は、東京や大阪には及ばず、品質は日本の中でも最悪のものでした。しかし、返品やクレームがあったことで、結果的に職人は商品の改良を重ね、腕を上げていったのです」。創設者の孫で現在は代表取締役を務める増永悟氏はこう語る。

多くの企業が現れては消え、市場に出回り始めた他のアジア諸国製の安価なメガネに押され、立ち行かなくなる企業もある。そんな中、高級メガネメーカーとして、増永眼鏡の勢いは現在も衰えていない。

同社は第二次世界大戦以前にアジアへの輸出を、戦後には欧米への輸出を開始した。しかし、当時の日本製品のイメージはまだ「安価」で「粗悪」というものだったと増永氏は説明する。

「今では販売店から、当社のメガネは長持ちしすぎるとのクレームがきます。『お客様は、フレームをそのまま使いレンズだけを何度も取り換えるので、レンズの売上は上がってもフレームの売上は下がっている』というのです。そんなに耐久性のあるフレームを作るなというわけです。半分は冗談だと思いますが」と、増永氏は笑う。

同社の海外売上比率は現在、およそ50%。米国の副大統領候補となったサラ・ペイリン氏が2008年の選挙運動中に着用していた特徴的なメガネのフレームが同社の製品であると大きく報じられてから、増永眼鏡の知名度はさらに高まった。しかし、世界にその名を轟かせた一方で、実は短期的には損害を出すことになった。

「ペイリン氏が着用していたKazuo Kawasakiモデルはもともと、年間5,000本ほどしか販売していませんでした。あらゆるメディアで彼女のメガネのことが話題になり始めると、すぐに10万本の注文を受けました。当時 、在庫は70本しかありませんでした」。増永氏は当時を振り返って言う。

「当社は製造をすべてそのモデルに切り替え、他のモデルの製造はストップしました。輸出の場合は利幅が小さいうえ、商品のお届けが遅れてお客様にはご迷惑をおかけしました。通常通りの営業を続けていた方が収益は上がっていたでしょう」。大きな宣伝効果があったことは認めつつも、増永氏はこう述べた。

未来型メガネ

増永眼鏡では、社長が「未来型メガネ」と呼ぶさまざまな種類の画期的なメガネの開発も行っている。例えば、一日中コンピューターの画面を眺めている人によく見られるドライアイや疲れ目の原因に一定の間隔で瞬きを行っていないという問題があるが、それを感知すると曇るウインクグラスがある。その他には、ほとんど視力のない人向けに、カメラのようなレンズが組み込まれた高強度のメガネを発明している。この「目に優しい」メガネは試作段階にあり、今後も焦点調節機構の研究が必要だが、増永氏は、いずれこの技術を完璧なものにすると自信を持つ。

一方、同社のテレグラスメガネは、装着型のモニターとしてビデオなどの画像を表示することができ、大手家電メーカーがこの技術を商品化する何年も前に誕生していた。未来的なこのメガネは、同社の創立100周年を記念して作られたコレクションの一部として2005年に開発された。増永眼鏡はまた、その歴史を称え、1930年代に昭和天皇に献上したメガネの復刻モデルを特別に発売した。非常に高額だったにもかかわらず、特徴的な丸いフレームが人気を博し、製造されたモデルは完売となった。増永氏の事務所には、1930年代当時のオリジナルのメガネが誇らしげに保管されている。

現在は、必要に応じてレンズに情報を表示できるメガネを開発中である。医師が手術を行う際やその他さまざまな用途が期待できると増永氏は考える。開発の間は、有能な技術者たちが製造工程の現場において絶えずフレームの品質向上に努めている。

同社のモデルのほとんどはさまざまな形で複製されると増永氏は言う。海外の格安メーカーがデザインを模倣する場合もあるし、技術関連企業が「未来型メガネ」のアイデアを盗むこともある。

「当社の製品は常に、模倣され複製されています。しかし、構いません。当社の職人の技やノウハウを完全に再現できる企業はありませんから」。増永氏はこう言って、自信に満ちた笑顔を見せた。

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