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Highlighting JAPAN

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国際森林年

森の恵みを守り活かす(仮訳)

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2011年は国連が定めた国際森林年である。日本や世界の森林の現状、そして森林の役割について、ジャパンジャーナルの澤地治が皆川芳嗣林野庁長官に聞く。

──国連が国際森林年を定めた背景をお教え下さい。

皆川芳嗣長官:世界の森林は、1990年から2010年の間に、1億3000万ha以上減少しました。特にシベリヤのような寒冷地帯の森林や赤道直下の熱帯雨林の過剰伐採は深刻です。そのため、例えば、インドネシアの熱帯雨林に住むオランウータンが絶滅の危機に瀕するといった問題が起きています。

日本は国土の約3分の2は森林で覆われています。しかし、日本の森林の約40%を占める人工林では、木材価格の低迷や木材需要の減少のため、間伐などの手入れが行き届かず、防災機能や二酸化炭素(CO2)吸収能力が落ちています。

こうした状況を改善するために、「持続可能な森林管理・利用」、つまり、森林の成長量を超えない範囲で木材を利用することの大切さを、より多くの人々に知ってもらう目的で国際森林年が定められたのです。

──日本はどのような国際貢献を行っているでしょうか。

まず、森林の再生が挙げられます。例えば、2008年に発生した中国の四川大地震の被災森林の再生支援です。四川大地震では大規模な山崩れが数多く発生しました。日本はこの山崩れを止めるための植林事業を支援しています。

また、東南アジアの熱帯雨林違法伐採対策のために、伐採した木材に付けたバーコードの情報を読み取ることで、その木材が合法的に伐採されたものかを判断する木材トレーサビリティ技術開発の支援も行ってきました。

さらに、地球温暖化防止交渉の中で日本は、開発発途上国における森林の減少を抑制することによって、温室効果ガスの排出を削減するREDD(Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation)の重要性を強く訴えており、これを促進するために、衛星を使って森林の状態を分析する技術の支援も行っています。

──東日本大震災で森林はどのような役割を果たしたでしょうか。

東北地方では江戸時代から津波、高潮、潮風、飛砂などの災害防止のために海岸防災林が造成されていました。東日本大震災によって発生した津波により、青森県から千葉県に至る沿岸に合計で200km以上にわたって植えられていた防災林の約3分の2が被害を受けました。しかし、防災林は津波エネルギーの減衰効果、津波到達時間の遅延効果、あるいは漂流物を食い止める役割を果たしました。

例えば、青森県八戸市は6mを超える津波に襲われ、20隻以上の船が海岸防災林をなぎ倒しました。しかしこれらの船はすべて防災林によって食い止められています。林の後ろにある住宅地に船が進入することを防ぐ結果となったのです。

今後、津波に対してより強い防災林を再生するために、根がより深く張るような植栽を行う、林の幅を広げるといった工夫を行います。

国際森林年記念事業として7月に開催された海岸防災林再生のためのシンポジウムには、駐日外国大使館の方々にも数多く参加を頂きました。今後、エネルギーや防災に関して、震災の経験を海外に伝えることも、日本の大きな役割です。

──東日本大震災からの復興のために、森林はどのように活用できるでしょうか。

東北は森の恵みが豊かな地域です。特に、太平洋岸は製材、合板、製紙といった工場が立地した木材産業の拠点です。今まで以上に森の恵みを活用することが被災地、そして東北全体の経済復興に大きな役割を果たします。

その一つに、木材のエネルギー利用があります。木質バイオマス発電所を建設することで、地元の木材利用による地域経済の活性化、CO2排出削減につながります。また、今回の震災では2000万トン以上の瓦礫が発生しています。この瓦礫のうち木質系のものは木質バイオマス発電などに利用できるでしょう。出来る限り早急に岩手県、宮城県、福島県に今後のモデルになるような、木質バイオマス発電所や地域熱供給施設を建設したいと考えております。

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