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Highlighting JAPAN

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特集次世代エネルギーへの挑戦

“スマート”さへの第一歩(仮訳)

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九州最北部に位置する100万都市、北九州市。同市では現在、低炭素社会の実現に向けた様々な先進的環境事業を実施している。また、新たな試みとして、市民や企業などの参加による「北九州スマートコミュニティ創造事業」の実証事業を昨年度より開始した。同市の環境まちづくりへの取り組みを山田真記がレポートする。

20世紀初頭から1960年代まで、北九州地域は、製鉄所を中心とした“鉄のまち”と呼ばれ、日本の近代化・高度経済成長の牽引役を果たしてきた。しかし、こうした産業の隆盛を誇る一方で、深刻な大気汚染や排水による水質汚染に苦しんだ歴史がある。この公害への対策を求めて1960年代後半に市民運動が活発化し、やがて行政や企業の公害対策強化を促し、市民、行政、企業が一体となった取り組みに発展した。同地域は、公害に苦しむ町から見事に再生を果たし、「奇跡のまち」として国内外から注目されるに至った。

1997年、政府は「北九州エコタウン事業」を承認した。これは、あらゆる廃棄物を他の産業分野の原料として活用し、廃棄物をゼロにする資源循環型社会を構築しようというものだ。市の北部に位置する若松区響灘地区響には、ペットボトルリサイクル、家電リサイクル、オートリサイクルなどの各リサイクル企業や、大学などの研究機関が進出している。

また、同市では、2011年1月より新たに「北九州水素タウン」事業をスタートさせた。この事業は、製鉄所における製鉄過程で発生した水素をパイプラインで供給して燃料電池を稼働させるという世界初の試みだ。実証実験は、福岡県や大手都市ガス会社などが共同で実施。総延長1.2kmのパイプラインで水素ステーションと、八幡東区東田地区の北九州水素タウンを結んだ。集合住宅1棟(7世帯)、博物館、ホームセンターなどに設置した、純水素型燃料電池14台を稼動させ、水素と酸素を結合させて電気と熱を生み出している。このシステムを利用することで、供給先においてコージェネレーションを行うことにより、発電時にCO2を発生させずに、電力需要の2〜6割を賄うことに成功した。

市民参加の環境対策

さらに、北九州市は、「北九州スマートコミュニティ創造事業」(以下、「創造事業」)を始めている。これを受け八幡東区東田地区において、①太陽光発電などの再生可能エネルギーの大量導入、②スマートグリッドによる消費者参加のエネルギーシステムの実現、③家庭やビルなどのエネルギー消費の削減、④電気自動車や燃料電池車の大量導入、⑤これらを通じた快適で利便性の高いまちづくり、を基本計画とした「創造事業」を2010年度から14年度までの5年間に総額163億円を投じて実施することとしている(北九州水素タウンも、実証事業の一つとなっている)。

「この事業の特徴の一つは、エネルギーの利用への市民の参加です。その市民の参加を促進するためには、スマートグリッドというシステムが非常に重要になってきます」と北九州市 環境未来都市推進室 スマートコミュニティ担当課長の柴田泰平氏は話す。「スマートグリッドとは、地域節電所を中心に、ITを活用し、地域の電力の需要・供給を最適化するシステムのことです」

地域節電所とは、スマートグリッドを運用するコントロールセンターだ。具体的には、地域節電所から住宅やオフィスに対して、地域の電力の需給状況に応じた電気料金や省エネガイダンスなどの情報をスマートメーターという次世代の電力メーターなどを通じて流し、消費者はこれらの情報を宅内の表示端末で見ることができる。また、消費者側からは、電力使用量や個々の消費者が持つ太陽光発電の発電状況などを地域節電所に集約する。消費者は、地域節電所から送られてきた情報に基づいて効率的に電力を利用することで、地域全体の安定した電力利用に貢献できると共に、自らも「スマートに」電力を使うことで電気料金削減などのメリットを受けることが出来るのだ。

八幡東区東田地区は既に、市内の標準的な地区と比較して、30%のCO2削減を達成しているが、実証実験を通じて、さらに20%以上削減することを目指す。

「『創造事業』が実現を目指す環境都市の未来像は、スマートライフ、スマートオフィス、スマートモビリティ、スマートファクトリーの4つのシーンが想定されています。まだ実験段階ではあますが、将来的には八幡東田地区での実証をステップとして、北九州市全域に事業を拡大していく計画です。また、実証事業で得られたノウハウ・成果をアジア地域を中心にビジネスベースで移転していくことも考えています」と柴田氏は話している。

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