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Highlighting JAPAN

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特集次世代エネルギーへの挑戦

石炭でクリーンなエネルギーを(仮訳)

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石炭火力発電は、風力発電と比較すると「古い」発電方法と見られがちだが、今、先端的な技術開発が進んでいる。日本が世界をリードする「クリーンコール技術」について、ジャパンジャーナルのエームズ・パムロイが報告する。

エネルギー資源として、石炭の長所は3つある。一つは、石油のように、ある特定の場所に、偏って埋蔵されていないこと。二つめが、埋蔵量が石油や天然ガスに比べて非常に多いこと[2010年のBP統計によれば、確認可採年数(これから何年採掘できるかという年数)が、石油が46年、天然ガスが63年、石炭が119年]。三つめは、価格が安いことである。

そのため、石炭は世界各地で広く使用されている。「石炭による発電は、日本の電力の約4分の1を賄っており、日本にとっても重要なエネルギー資源です」と、石炭に関する技術開発、事業化支援、技術の普及・移転等を行っている石炭エネルギーセンター(JCOAL)のアジア太平洋コールフローセンター事務長、吉田実氏は言う。

しかし、エネルギー資源としての石炭には欠点もある。成分に炭素が多いため、燃やすと、石油や天然ガスに比べ二酸化炭素(CO2)を多く出すことだ。また、SOx、NOxの発生量も多い。

こうしたことから、日本はばいじんやSOx、NOxの排出とともに、CO2の排出削減を含めた、石炭を利用する際の環境負荷を低減する技術「クリーンコール技術」の研究開発に力を入れている。

その有力な技術の一つが、数年以内の商用化に向けて試験が続く、石炭ガス化複合発電(IGCC)だ。従来の石炭火力発電は、石炭を燃やし蒸気を発生させて、その蒸気でタービンを回す。IGCCは、石炭をガス化し、可燃性ガスに変換して、ガスタービン燃料として利用。さらに、ガスタービンを回す際に発生する高温の排ガスをボイラに導いて蒸気を発生させ、蒸気タービンを回す。つまり、ガスタービンと蒸気タービンの両方で発電するので発電効率が上がる。

日本の9つの電力会社と電源開発株式会社(J-Power)が共同で、IGCCの実証試験プラントを福島県いわき市の勿来(なこそ)に建設し、IGCC技術の商用化のための実証を進めている。

「従来型の石炭火力発電の発電効率は約42%でしたが、将来商用化されるIGCCでは、約50%の発電効率が見込まれます」と吉田氏は言う。

発電効率が高ければ、当然、CO2の発生も減少する。IGCCは従来の石炭発電に比べ、約15%のCO2排出量を削減、そして、石油火力発電とほぼ同じCO2排出量で、同等の発電量を発生できるのだ。

IGCCは欧米においても開発が進められているが、それらは空気を酸素と窒素に分離させて、その酸素を使って石炭のガス化を行う「酸素吹き」であるのに対し、勿来で開発が進められているIGCCは空気をそのまま石炭のガス化に使う「空気吹き」である。「酸素吹き」の場合、自ら発電した動力で酸素を作り出さなければならない。そうした動力ロスを減らし、高い効率を得ようとするのが「空気吹き」だ。

勿来のデモンストレーションプラントは東日本大震災で発生した津波で大きな被害を受けたものの、7月末に運転を再開する予定だ。

地下を利用

商用化が期待されているIGCCを、さらに進めたクリーンコール技術の研究開発も行なわれている。それが、IGCC以上に高効率な発電を目指す石炭燃料電池複合発電(IGFC)だ。これは、ガスタービンと蒸気タービンに加え、石炭ガスに含まれる水素と一酸化炭素を燃料にして、燃料電池によっても発電する方法だ。これにより、既存の石炭火力発電所と比べてCO2排出量を最大30%程度削減できる見込み。

J-Powerの若松研究所(福岡県北九州市)で行われているEAGLE(Coal Energy Application for Gas, Liquid & Electricity)プロジェクトは、IGCCとIGFCの実現に不可欠な技術の研究開発を行っている。

EAGLEプロジェクトは現在までに、高効率に石炭ガスを製造できるガス化炉の開発を目標としたステップ1、CO2の分離・回収技術の確立を目標とするステップ2が終了している。これらの技術によって、石炭ガスの中にあるCO2を効率的に分離させることが可能になった。

CO2の分離により、殆ど外部に排出することなく回収・貯蔵できる。この技術をCCSという。CCSは日本を始め、世界各国で研究が進んでいる。CO2を貯蔵する場所の一つは、地中だ。地中に埋めて、大気から半永久的に隔離するのだ。

「IGFCとCCSを組み合わせることでCO2をまったく排出しない石炭火力発電が可能になるのです」と吉田氏は言う「将来的には、この技術を海外でも普及できればと考えております」

現在、J-Powerは若松研究所で、さらなる技術開発となるステップ3を進めるとともに、電力会社と共同で、現在までの成果を反映した大型実証試験設備を広島県大崎地点に建設することを計画している。この大崎クールジェンプロジェクトで実証実験を進めることで、IGFCとCCSの実用化を目指す。

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