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Highlighting JAPAN

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特集環境と都市の成長

エコファクトリー(仮訳)

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日本では、工業製品の生産現場でも、環境対策の取り組みが進んでいる。地球にやさしいだけでなく、業務の効率化にも役立ち、企業の競争力向上にもつながっている現場を、河崎美穂が紹介する。

技術革新でCO2削減を目指す

日本を代表する衛生陶器メーカーとして知られるINAXは2008年、2050年のCO2総排出量を1990年比で80%削減するという目標を掲げて、積極的な取り組みを進めている。

同社執行役員サステナブル・イノベーション部部長の水野治幸氏は「省資源包装の徹底や、原料のリサイクル、社用車のエコカーへの切り替えなど、日常の事業活動内の努力も進めてきました。しかし、当社の各部門でCO2排出量を調査したところ、衛生陶器とタイルの窯業分野で約80%を占めていることがわかりました。目標の達成にむけては、大量に化石燃料を消費していた窯業技術の見直しが不可欠でした」と話す。「従来の工場では、タイルや便器を焼く焼成炉の周囲まで高温になっていました。それはすなわち熱エネルギーが無駄になっているということを意味します。従来は使われなかったその熱エネルギーの再利用を可能にするリジェネレイティブバーナーの導入を決め、制御技術を確立しました」

リジェネレイティブバーナーとは、焼成時に発生する高温の排熱を蓄熱し、その熱を焼成炉内に送り、燃焼用空気の加熱に再利用する仕組みだ。ものを燃やす際には、燃料と同時に空気も炉に送り込むことが必要だが、高温の空気を使用すると燃焼効率が上がり、省エネルギーをはかることができる。実証実験では従来の炉に比べCO2を約3割削減することができたという。現在は、実験段階を終えている。

今後は、窯全体を熱する焼成から、製品だけに熱を伝えられるような技術開発を目指しているほか、電子レンジのようなマイクロウェーブを利用した焼物の乾燥技術の研究も進められている。また、太陽光や風力など自然エネルギーの自給に向けての検討も始めているという。

「われわれの基本はモノづくりです」水野氏は言う。「生産現場でのCO2削減につとめながら、社会に貢献できるような窯業製品の生産を行っていきたいと思います」

複数の企業が協力してエコで競争力アップ

液晶パネル生産量で世界トップクラスを誇るシャープは、2009年より先進的な環境対策を施した新工場を大阪府堺市で稼働させている。約3メートル四方のマザーガラスを、テレビ用などの大型液晶パネルに加工できる工場は、現在世界でここ1か所である。

太陽電池工場も併設しており、クリーンエネルギーとして普及が進む太陽電池パネルを世界に供給している。

この工場の最大の特徴は、21世紀型コンビナート「グリーンフロント堺」として、シャープを中心に、液晶パネル生産に必要なマザーガラス、カラーフィルター、エネルギー関連、物流など、さまざまな業種の19の企業が同一の敷地内に集まり、それぞれの工場で使用するエネルギーを一括して管理することを通じて、大幅な省エネルギーを実現している点だ。ガラス工場の製造過程で発生した熱を、液晶パネル洗浄用の純水精製の際に利用するなど、企業の枠を超えてエネルギーを再利用する取り組みも行われている。さらに、各工場は棟間搬送システムと呼ばれるもので結ばれている。このシステムにより、液晶パネルの生産リードタイムの短縮や中間在庫の削減に加え、敷地内でのトラック輸送をなくすことで、CO2排出の大幅削減に繋がっている。

敷地内の照明は、屋外灯から、自動販売機に至るまですべて省エネで長寿命のLED照明だ。歩道には液晶パネルのガラス端材を加工した透水性ブロックが埋め込まれている。また、各工場の屋上には、太陽光発電パネルの設置計画があるほか、近隣では、この堺工場で生産された薄膜太陽電池パネルを使用した関西電力による大規模太陽光発電設備の建設も進んでいる。

また「グリーンフロント堺」の各企業は、生産計画から工程管理、出荷にいたるサプライチェーンの流れに関する情報をITで共有し、高い生産効率を実現している。

シャープのグリーンフロント堺企画推進センター所長の森拓生氏は、「訪問される方がいちばん驚かれるのが、19社の企業の協力体制により「グリーンフロント堺」がまるでひとつの企業であるかのように機能していることです。当社は約40年前に電卓の表示装置として、世界で初めて液晶の実用化に成功しました。以来、液晶という新しいディスプレイ市場を広げていく中で信頼関係を培ってきた会社が協力するからこそ、前述のとおり、高い生産性と優れた環境対策が可能になりました」と話す。

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