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March 2024

東北復興のシンボルとなる気仙沼湾横断橋

  • 気仙沼(けせんぬま)湾(宮城県)を横断する壮大な橋(全長1344メートル)
  • 気仙沼湾の風景(中央やや右上が気仙沼湾横断橋)
  • 気仙沼湾横断橋建設中の様子
  • すっきりとしたデザインが特徴的な気仙沼湾横断橋
  • ライトアップされた気仙沼横断橋の夜景
気仙沼(けせんぬま)湾(宮城県)を横断する壮大な橋(全長1344メートル)

2011年3月11日に発生した東⽇本⼤震災からの復興のリーディングプロジェクトとして日本政府が整備を進めてきた「気仙沼(けせんぬま)湾横断橋(愛称:かなえおおはし)」について、その概要を紹介する。

気仙沼湾は、宮城県北東部の気仙沼市にある湾で太平洋に面している。湾の中央部にある大島(気仙沼大島とも呼ぶ)によって東湾と西湾に分けられる。西湾の奥にある気仙沼港は、日本有数のカツオやサンマ、サメの水揚げ量で知られる天然の良港であり、リアス式海岸の地形を活かしたカキやワカメ、ホヤの養殖も行われている。

2011年3月に発生した東日本大震災による大津波とその後の大規模な火災は、気仙沼市の人々の暮らしや産業に壊滅的打撃を与えた。そこで日本政府は県や市とともに様々な復興計画を策定。その中の一つに「気仙沼湾横断橋」の建設があった。

国土交通省・南三陸沿岸国道事務所工務課によると、プロジェクトは2012年から始まった。まず、橋を架けるルートの選定を行ったが、「入念な調査を行い、地域の皆様の声を反映しています」という。

気仙沼湾の風景(中央やや右上が気仙沼湾横断橋)

その結果、気仙沼湾を横断する海側ルートに橋の建設が決定し、実際の設計がスタート。「橋の建築形式を決定するにあたり、地震や津波など自然災害への対策はもちろん、豊かな漁場や養殖場の障害とならない場所への設置とし、デザインや色彩は周囲の自然環境に調和することを心がけました」

気仙沼湾横断橋建設中の様子

周囲の景観によりそうようなシンプルなデザインが採用され、陸上部は一般的な鋼箱桁橋(こうはこげたきょう*)、海上部は海をまたぐ2本の主塔とケーブルで支えられる斜張橋(しゃちょうきょう)として架けられることが決まった。「気仙沼湾横断橋の技術的な特徴として『ダメージコントロール設計』という新しい設計方法があります。暴風や地震・津波などの災害が発生しても、この橋は緊急輸送路としての役目が求められるため、それらによる橋の破壊の分析や解析をパーツごとに緻密に行い、「想定外」の損傷を「想定内」とする設計を実施したのです」

すっきりとしたデザインが特徴的な気仙沼湾横断橋

過去の経験から得た知見を最先端の技術に活かして造られた気仙沼湾の上を渡る大橋は、全長1344メートル。

「愛称は公募により『かなえおおはし』と決まりました。夢や希望、願いを「かなえる」という意味も込められている非常によい名前だと思います」気仙沼湾横断橋は、2021年3月6日に開通した。これによって宮城県内で「復興道路」**として整備が進められていた延長約126kmが全区間開通した。今後の地域産業発展への貢献も期待されている。

大震災から10年目という節目の年(2021年)に、復興のシンボルとして開通した気仙沼湾横断橋。夜間のライトアップも好評で、気仙沼の新たなランドマークとなっている。今後も気仙沼市ひいては東北の発展の一翼を担うにちがいない。

ライトアップされた気仙沼横断橋の夜景

* 鋼材を箱形断面に組み立てて桁とした橋。桁橋は、車両や人々が通行する床版と、それを支える主桁から構成されている。
**2021年に開通した三陸沿岸道路(三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道)の総称。青森県八戸市から宮城県仙台市までの沿岸部がつながった。