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January 2024

冬の蔵王に広がる樹氷の世界

  • 樹氷群の先に広がる蔵王連峰
    Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク
  • アオモリトドマツの枝葉に氷や雪が積み重なって生まれる樹氷
    Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク
  • 奇妙な形状からワイルドモンスターと呼ばれる樹氷 Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク
  • 樹齢が300年近いと言われるアオモリトドマツの樹氷。巨大な生物のようにも見える。 Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク
樹氷群の先に広がる蔵王連峰 Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク

日本の東北地方、宮城県と山形県の両県にまたがる蔵王(ざおう)連峰では、冬になると雪と氷で樹木が覆われる「樹氷(じゅひょう)」を楽しむことができる。宮城県側で樹氷の見学ツアーを開催する担当者に話を聴いた。

実は、樹氷は日本でも一部の山域でしか確認されず、海外でも非常に希少な自然現象だ。蔵王の樹氷は、着氷、着雪及び燃結の三つのステップで形成されるという。「着氷」は雪や風の中に増えた水分が自生している常緑樹のアオモリトドマツ*の枝や葉にぶつかり、凍ること。次に「着雪」は、着氷した氷の隙間に吹雪などで多くの雪が入り込むこと。そして「燃結」は更に雪がくっつき、風上に向かって成長していくこと。この三段階ステップが繰り返され、樹氷になっていく。

アオモリトドマツの枝葉に氷や雪が積み重なって生まれる樹氷 Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク

宮城蔵王すみかわスノーパークの片瀬泰之(かたせ やすゆき)さんはこう説明する。

「宮城側では12月から樹氷を観測することができます。最初は枝の先に『エビのしっぽ』と呼ばれる樹氷の赤ちゃんがくっつき、枝葉もまだ見えているので、クリスマスツリーのようです。次第に氷の層が重なって大きくなっていき、ワイルドモンスターと呼ばれる雄々しい樹氷の姿になっていきます。だいたい3月までは樹氷を観測することができますよ」

山形県側でも樹氷を観測することができるが、山形の「柔らかく丸みを帯びたやさしい」樹氷に比べると、宮城側は「ゴツゴツしていて荒々しい」樹氷だという片瀬さん。その理由は、地形に関係しているという。

奇妙な形状からワイルドモンスターと呼ばれる樹氷 Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク

「山形側は西風が海から運んできたパウダー状の細かな雪が降り積もって樹氷となります。宮城側は蔵王連邦にあたって吹き下ろす強い風が生み出す雹(ひょう)のような硬い粒が凍るので、より荒々しい樹氷になると言われています」

荘厳かつ勇壮な樹氷群は、まさに蔵王の厳しい冬の自然を象徴するアート作品のようだ。

雪上車から樹氷を観測する人気のツアー Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク

「最近は海外からの観光客も多く、特に雪上車から景観を楽しむツアーが人気です。樹氷は風上方向の西向きに形成されていくので、太陽の光を受けて輝く姿が楽しめる午後の時間帯のツアーをおすすめしています」

最近は、蔵王連峰に自生するアオモリトドマツが老木化し、害虫被害などが後を絶たない。そのため山形県と宮城県の両県で、アオモリトドマツの保存や再生についての検討会を定期的に行っているという。

「アオモリトドマツは樹齢が300年とされ、成長が非常に遅く、発芽してから実をつけるまでに50年以上かかると言われています。標高1100m以上ないと育たない高山種なので、人工的に増やすことがなかなか難しいとされています。冬の蔵王の景観を守るため、さまざまな取組を行っています。ぜひこの荘厳で美しい樹氷群を観に蔵王に足を運んで欲しいです」

樹齢が300年近いと言われるアオモリトドマツの樹氷。巨大な生物のようにも見える。 Photo: 宮城蔵王すみかわスノーパーク

* マツ科モミ属の常緑性の針葉樹。オオシラビソとも呼ぶ。本州北部の亜高山帯に分布。