October 2023
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雄大な自然と現代アートを体感する
日本の本州の東北地方でも最北部の青森県。その南部に十和田市(とわだし)は位置する。十和田市は、国立公園が有する自然と、十和田市現代美術館を中心とした現代アートが融合するまちで、海外からの観光客も多く訪れる。この地域の魅力と美術館を中心とした文化観光への取組について話を聞いた。
十和田市の西部には、十和田八幡平(とわだはちまんたい)国立公園*がある。公園は、十和田湖や、紅葉と氷瀑(ひょうばく)**で知られる奥入瀬(おいらせ)渓流、八甲田山(はっこうださん)の樹氷(じゅひょう)***など数々の絶景を有している。
一方、市東部の市街地には、十和田市現代美術館を中心に「アートによるまちづくり」が推進されている。その中核となる施設は2008年に開館した十和田市現代美術館だ。国内外の38組の現代芸術家による43の作品を常設展示(2023年10月時点)しており、その多くが大型作品。受注制作のため、ここでしか見られないことも来訪の価値を高めている。そして、この美術館は、作品の保存、展示だけでなく、地域社会に溶け込みながら、ともに発展することをコンセプトとしており、それが実現しているという。十和田奥入瀬観光機構の下田達也(しもだ たつや)さんは説明する。「作品は建物の内外から鑑賞できる構造になっており、施設周辺の屋外にも作品が設置されています。市街地を歩いているだけで、街そのものが美術館になっているかのような体験ができます」。
また、海外からの観光客受け入れのための取組も進んでいるという。「十和田市に来訪する海外の方たちの割合は観光客全体の約20%。最も旅行者が訪れる十月は、奥入瀬渓流などの紅葉が目的です。多くの観光客は、アートと十和田の自然と両方を楽しんでもらっていると思います」と下田さん。ちなみに、海外観光客は、中国、香港、台湾、韓国など東アジアからが多いという。
来訪者に合わせた観光案内の多言語化も進んでおり、パンフレットや地図などは、英語、中国語の繁体字・簡体字、韓国語に対応している。観光案内所にも、英語、中国語、韓国語が話せるスタッフも配置して、様々な問い合わせに対応できるよう工夫しているという。自然と人間、両方の創造の力と造形美が体感できる魅力あるまち・十和田市へ、機会があったら足を運んでみてはいかがだろうか。
* 青森県、岩手県、秋田県にまたがり、大きく十和田八甲田地域と、八幡平地域と分けられる。公園は山岳地帯に含まれており、山と湖と渓流が魅力的で、温泉地も多い。
** 凍りついた滝のこと。滝の流れが冷たい外気に触れることで凍っていく。気象条件が整う場所でしか見られない。また、奥入瀬渓流では、滝のような規模まで大きく成長した氷柱も見られる。
*** 常に一定方向の強風で運ばれてきた過冷却水滴と雪が、アオモリトドマツに付着して凍りつき、木を完全に覆うように成長すること。氷雪の塊のような独特の姿から「スノーモンスター」ともいわれる。見頃は二月。