September 2023
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東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出について
ALPS処理水*とは、東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、浄化設備「ALPS」を用いて様々な放射性物質を取り除いて浄化した水である。2023年8月24日から、東京電力はALPS処理水の海洋放出を開始した。この記事では、ALPS処理水海洋放出について、その安全性を中心に紹介する。
ALPS処理水海洋放出の安全性
ALPSとは、Advanced Liquid Processing Systemの略で、様々な放射性物質を取り除いて浄化する「多核種除去設備」だ。ALPS処理水は、ALPSを用いて、トリチウム**以外の放射性物質を安全基準を満たすまで浄化した水であり、トリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、放出する前に海水で大幅に薄めている。薄めた後のトリチウムの濃度は、原子力規制委員会が定めた安全基準の40分の1(WHOが定める飲料水基準の約7分の1)未満になる。安全基準を満たした上で、放出する総量も最大22兆ベクレル/年となるよう管理して放出するため、環境や人体への影響は考えられない。
ALPSは安定して性能を発揮しており、また、複数の装置があり、点検や故障の際も代替可能な構成だ。
放出前のALPS処理⽔に含まれる放射性物質の濃度については、東京電⼒による分析に加え、日本原子力研究開発機構(JAEA)や国際原子力機関(IAEA)***が、第三者として独⽴した分析を実施することで、データの客観性を徹底的に確保する。
IAEAがALPS処理水海洋放出の安全性を確認
IAEAは原子力分野について専門的な知識を持った権威ある国連の関連機関(原子力安全基準を策定・適用する権限を保有)であり、ALPS処理水の海洋放出について、専門的、客観的な立場からレビュー(検証)を実施した。その結果、2023年7月4日に、ALPS処理水の海洋放出は、「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」といった結論が盛り込まれた包括報告書が公表された。
IAEAは、放出前のレビューだけではなく、放出中・放出後についても長年にわたってALPS処理水の海洋放出の安全性確保にコミットしており、東京電力福島第一原子力発電所にIAEA事務所を設け、放出現場での活動を継続し、放出に関するデータをリアルタイムで国際社会に提供するほか、追加のレビューやモニタリングを継続し、国際社会に透明性と安心を提供する姿勢だ。IAEAのラファエル・グロッシ―事務局長も、最後の一滴が放出し終わるまでIAEAは関与していく旨述べている。
このIAEAの包括報告書の公表を受けて、ALPS処理水海洋放出に関する我が国の取組やIAEAの包括報告書の結果について、科学的根拠に基づくものであるとして、多くの国・地域から支持を受けている。
ALPS処理水に係るモニタリング
ALPS処理水は、放出前に、含まれる放射性物質の濃度測定を行い、安全基準を満たすことを必ず確認するなど、厳格に管理されて放出が行われることから、近傍に生息する魚などについても食品安全上の問題は生じない。また、東京電力や環境省、水産庁等の機関では、ALPS処理水に係る海域モニタリングを実施しており、ALPS処理水の放出開始後の分析結果においても、トリチウムの濃度に異常は見られず、人や環境への影響がないことが確認されている。結果の詳細については、「ALPS処理水に係る海域モニタリング情報」ページにおいて随時掲載される。
* 「HIGHLIGHTING Japan」2022年10月号「ALPS処理水の海洋放出の安全性」参照
** 「トリチウム(三重水素)」は水素の仲間で、水道水や雨水、人体の中にも存在する。トリチウムが出す放射線のエネルギーは非常に弱く、紙1枚でさえぎることができる。
*** 国際連合(国連)の後援のもと、1957年に自治機関として設立された、原子力に関する国を越えた協力を進めている国際機関。
注記: 本記事は経済産業省の了解の上、同省の公表資料に基づき作成している。