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September 2023

鶴が羽を広げたような姿の美しい木造の橋「鶴の舞橋」

  • 津軽富士とよばれる岩木山の山麓で美しいアーチを描く太鼓橋 Photo: 鶴田町役場
  • 次の世代に木のぬくもりを伝えたいという想いが込められた橋 Photo: 鶴田町役場
  • アーチの麓である100mごとに設けられた東屋(あずまや)ステージ
    Photo: 鶴田町役場
  • 青森の四季とともに表情を変える鶴の舞橋 Photo: 鶴田町役場
津軽富士とよばれる岩木山の山麓で美しいアーチを描く太鼓橋 Photo: 鶴田町役場

青森県鶴田町(つるたまち)にある津軽富士見湖にかかるのは、木造の三連太鼓橋*「鶴の舞橋(つるのまいはし)」だ。鶴田町役場の企画観光課の境谷咲歩(さかいや さきほ)さんに橋の魅力を教えていただいた。

さながら鶴が羽根を広げたような姿の「鶴の舞橋」は、湖畔の情景にしっくりと溶け込み、美しい景観を生み出している。この橋は、日本の伝統を感じさせる木造であるが、創建されたのは1994年と意外に新しい。ため池(貯水池)でもある津軽富士見湖の湖水の状態を監視、確認するといった管理のため、そして観光用として湖に架けられた。境谷さんは言う。

次の世代に木のぬくもりを伝えたいという想いが込められた橋 Photo: 鶴田町役場

「この辺りは古くは「『津軽(つがる)』と呼ばれ、ここから望める山容が富士山に似ている岩木山(標高1625メートル)を『津軽富士』とも称しています。1660年、津軽地方を統治していた弘前(ひろさき)藩**4代藩主信政(のぶまさ)が新田開発のために堤防を築き、大規模な貯水池***として造成したのがこの津軽富士見湖で、湖面に津軽富士を映すことからその名がつけられています。湖の周囲の堤防は4.2キロメートルと、貯水池の堤防の長さとしては日本一です」

さらに境谷さんは、鶴の舞橋についても説明してくれた。

「全長300メートル、総ひば造りの三連太鼓橋です。周辺の自然環境や景観との調和を保つため、橋脚には樹齢150年以上の青森ひば700本を使用し、日本の伝統的な木造建築技術を駆使してつくられました」

橋には100mごとに休憩や小イベントに使うことのできる東屋(あずまや)ステージが配されており、地域の憩いの場としての役割も果たしているという。

アーチの麓である100mごとに設けられた東屋(あずまや)ステージ Photo: 鶴田町役場

また、「鶴の舞橋には、数字にまつわる興味深い話があります」という境谷さん。

「三連太鼓橋にちなんで、「3」の数字を探していると、偶然にも「3」づくしの橋だということが判明したんです」

確かに鶴の舞橋は全長が300メートル、幅は3メートル、さらに橋脚の直径は30センチ、丸太使用量3000本、板材使用数3000枚と確かに「3」づくし。

「橋は、近くの富士見湖パーク内に祀られている「観音八角堂」と一直線で結ばれています。日本において縁起が良いとされる数字「3」づくしの橋が観音様に通じる「みち」になっていると話題になり、開運・長寿のパワースポットとしても注目されているのです」

もとより、何と言っても見所は、この橋と、橋を引き立てる津軽地方の雄大な自然との一体的な美しさだ。

青森の四季とともに表情を変える鶴の舞橋 Photo: 鶴田町役場

「春には桜、秋には紅葉とともに鶴の舞橋を楽しむことができますし、綿帽子をかぶったような冬の情景も非常に魅力的。また空気が澄み渡る秋と冬、星空の下でライトアップされる鶴の舞橋は格別なものがあると思います」

秋と冬の夜は橋の欄干がライトアップされ、光の帯が湖面に浮かび上がる。 Photo: 鶴田町役場

「今年(2023年)9月で築30年を過ぎますが、老朽化してきたため、今年から2025年までの3年間にわたって、大規模改修を実施します。改修工事の実施は、各年、9月1日から3月31日の期間です。工事が終わるまで鶴の舞橋は、全面通行止めとなりますが、その間も外観はそのままに見学していただけます。また、工事期間中の特別イベントも予定していますので、ぜひ楽しみにしていてほしいです」

* まん中が高く半円形をした反橋(そりはし)を、太鼓の胴に形が似ているところから、太鼓橋という。それが三つつながっている橋が三連太鼓橋。
** 弘前藩(ひろさきはん)は、江戸時代に陸奥国(むつのくに。現在の青森県にほぼ一致する)の津軽地方を統治していた藩。津軽藩(つがるはん)とも呼ばれていた。現在の青森県西部を領していた。
*** 正式名称は廻堰大溜池(まわりぜきおおためいけ)と言い、県内最大の貯水池である。