日本の食べ物の魅力を発信するイタリア人

2007年に来日し、日伊通訳者あるいは日伊の企業間取引のコーディネートに関する起業家として活躍してきたマッシミリアーノ・スガイさん。そのかたわら、SNSや自著で伝統的な和食からコンビニスイーツまで、幅広く日本の食文化の魅力を発信して人気を集めている。

日本のイタリア料理の外食チェーンのメニューをイタリア人流にアレンジする方法をSNSなどで紹介し、話題を集めたマッシミリアーノ・スガイさん。愛称は「マッシ」だ。自身のSNSでは、日本人にとっておなじみのカフェやファミレスなどのグルメを取り上げ、イタリアと日本の違いについて触れながら、その魅力を語っている。

マッシミリアーノさんが日本の面白さとして感じているのが、海外から入ってきた食べものを日本独自に進化させたり、定番の食べ物であっても季節感を加えたりして限定のフレーバーを次々と生み出したりする、日本人のアレンジ力だ。

「例えば、日本で流行ったマリトッツォ**。もともとはイタリア・ローマ発祥のお菓子です。ローマで見かけるのは昔ながらのシンプルなマリトッツォが多いのですが、日本で出会ったマリトッツォはローマで食べた味とは別物。いろんなお店が独自のアレンジを加えて日本人に向けた新感覚のマリトッツォを開発しているため、バリエーションが豊富です。しかも、どれもおいしい。本場のイタリア人でさえ気づかなかったアレンジを加え、新商品を生み出す日本人の発想力はすばらしいと思います」

来日したばかりの頃は、日本の夏の風物詩であるかき氷***にも驚いたそうだ。

「ただの氷を削ってシロップをかけただけで、なんでこんなにおいしくなるのかと感動しました。その上に餡（あん）や白玉をのせた和風かき氷を見たときは、本当に驚きましたね」

もともとマッシミリアーノさんが大学で日本語を専攻したのは、日本文学を日本語で読みたいと思ったのが理由だった。勤めていた会社の転勤で2007年に来日。その後独立し、日伊通訳者として、イタリア企業と日本企業のコミュニケーションを支援する仕事を日本で続けてきた。コロナ禍で通訳の仕事が減ったことをきっかけに、SNSで好きな食べ物について日本語で投稿し始めたことが今の活躍につながっている。例えば、日本人になじみのある「たまごサンド」も、マッシミリアーノさんにとっては驚く食べ物だ。海外でも卵を使ったサンドウィッチはあるが、卵だけが具材になっているサンドウィッチは少ないという。

「卵しか入っていないのにクリーミーでこんなにおいしい。ぜひ日本人にも美味しさを再発見してもらいたいです」

ほかにも、コンビニで売られているスイーツやスナック菓子など、日本人にとって身近なあまり、普段は意識しない食べ物の美味しさについて、マッシミリアーノさんならではの視点で驚きと感動を伝えている。

子どもの頃から食べることが大好きで、「食は人生を豊かにするために欠かせない大切な存在」と語るマッシミリアーノさん。独自の視点を交えて食の情報を発信し続けるのは、「大好きな日本で、好きな食べ物と出会って感動した体験を、多くの日本人に知ってもらいたい」という思いがあるからだ。

マッシミリアーノさんは、現在、石川県金沢市で暮らしている。金沢は、かつて日本でも有数の大名として知られる前田家の城下町として栄え、人口約46万人（2023年6月現在）の都市だ。前田家が芸術文化を奨励したこともあって、様々な日本の伝統文化が息づき、和食がおいしく、都会的でありながらゆったりとした時間が流れている。マッシミリアーノさんは、そんな金沢の魅力を始め、石川県の食や文化の発信にも取り組んでいる。

マッシミリアーノさんは、昨年（2022年）、日本の食べ物の魅力をまとめた著書『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』を刊行した。「食べることとともに、書くことが好きなので、これからも日本の魅力を再発見できるような発信をしていきたい」と語るように、その言葉とアイデアで、これからも多くの人を楽しませてくれるはずだ。

* https://www.instagram.com/massimiliano_fashion/
** パンに生クリームをたっぷり挟んだイタリアの伝統的な菓子。
*** 機械などで氷を細かく削り、シロップをかけた氷菓。
*** https://twitter.com/massi3112