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June 2023

日傘にも使える洋傘を手作りする老舗

  • 生地の艶が美しい手作りの洋傘。
    ©️前原光榮商店
  • 「生地」は富士山麓の工場で製造。先染めの糸を用い、織り上げる。 ©️前原光榮商店
  • 織りあがった生地は、職人が調整して自作した木型で裁断。 ©️前原光榮商店
  • オリジナルのレース生地を幅広に使った日傘。 ©️前原光榮商店
  • 傘を止める部分はボタンに輪をひっかけて留める、昔ながらの和環(わかん)。 ©️前原光榮商店
  • 男性の間でも浸透し始めている日傘。男性ファッションに合う日傘を提案している ©️前原光榮商店
生地の艶が美しい手作りの洋傘。 ©️前原光榮商店

東京に、75年に渡って洋傘を作り続ける店がある。手作りの、その洋傘の中でも、今、日傘や晴雨兼用傘が人気だという。

東京の台東区浅草。下町の風情の残る地域で、1948年、前原光榮商店は創業し、熟練の傘職人による洋傘の製造を続けている。「現在、日本の洋傘づくりの工程は、機械化され大量生産している部分もありますが、かつては専門の傘職人が、一本一本手作りしていました。私たちは、その昔ながらの製法を引き継ぎ、工程一つ一つにこだわりを持って、今でも手作りしています」と代表取締役の前原慎史さん。

「生地」は富士山麓の工場で製造。先染めの糸を用い、織り上げる。 ©️前原光榮商店

洋傘作りには、大きく「生地」「骨」「手元」「加工(裁断縫製)」の四つの工程がある。前原光榮商店では、傘に使う生地は、織物の産地として有名な、富士山の山麓に位置する山梨県富士吉田市で織られている。昔ながらの織機で織った傘地に防水加工を施したものを使用している。手でもつ部分の「手元」は材質によって熱を加え、熱湯につけて柔らかくし「曲げ」を作る。そして織り上がった生地を裁断縫製し、「骨」とともに加工職人に渡され、組み合わされる。この工程が、傘を広げた時の張りや音、形に影響を与えるため一番大事だそうだ。

織りあがった生地は、職人が調整して自作した木型で裁断。 ©️前原光榮商店

日本では、海外ではあまり目にしない日傘をさす習慣がある。日本の夏は暑さが厳しく、日本女性は、日焼けによる肌への影響から、日差しが強くなる季節になると日傘を日常的に使用する人が多くなる。近年は、暑さに対する熱中症対策ということもあり、女性だけではなく、男性でも日傘を使う人が増えてきている。 前原光榮商店では日傘に用いられる生地は国産の麻をはじめレースなどを使ったもの、染め物の生地を利用した伝統的なイメージの日傘作りを心がけているという。

男性の間でも浸透し始めている日傘。男性ファッションに合う日傘を提案している ©️前原光榮商店
オリジナルのレース生地を幅広に使った日傘。 ©️前原光榮商店

また、お店で一番人気の傘は、雨傘としても日傘としても使える晴雨兼用のオールウェザータイプで、よく売れているという。

傘を止める部分はボタンに輪をひっかけて留める、昔ながらの和環(わかん)。 ©️前原光榮商店

「海外のお客様も多くご来店されますが、日本製で、日本の職人が製作したものであることを好まれて選ばれます。伝統工芸や他ブランドとのコラボレーション商品も人気があります。今までの例ですと、スタジオジブリの映画『となりのトトロ』に登場する、トトロがさしている傘を再現したものや、過去にはアニメ『エヴァンゲリオン』のカラーリングで作ったものも人気でした。アパレルメーカーとのコラボもオーダーが多いです」。ぜひ日本を訪れたなら、日本ならではの手作りの洋傘に触れてみてほしい。

日本女性の間では日焼けを気にすることも日傘を日常的に使う理由。