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May 2023

樹木を護り、自然と暮らす楽しさを伝える

  • ジョシュア・カルフォさん
  • 作業中のジョシュアさん
  • JR静岡駅ビルの屋上で開催した庭師らの作品を集めたイベントでは、1坪(3・3平方メートル)の坪庭で多彩な造園技術を披露
  • 自然をモチーフにしたシャツや雑貨
  • 静岡県藤枝市の街並み
ジョシュア・カルフォさん

イギリス出身のジョシュア・カルフォさん。2016年に来日し、静岡県藤枝市(ふじえだし)で林業に従事。現在は独立して、アーボリスト*として樹木のメンテナンスや造園を手がけながら、自然の価値を伝える活動をしている。

「ロンドン育ちなのに子どものころから自然や動物が大好きで、いつか山の中で暮らしたいと思っていました」と語るジョシュア・カルフォさん。

ロンドンでアパレル関係の仕事をしていたが、日本人のパートナーが帰国することになったタイミングで日本への移住を決意。2016年に来日した直後は東京に住んでいたが、週末を使って彼女の実家がある静岡県を訪れるたびに、山と海がすぐそばにある自然豊かな環境に心が動かされた。「この場所で暮らしたい」とジョシュアさんからパートナーに提案し、2017年に結婚後、静岡県藤枝市に引っ越すことに。

作業中のジョシュアさん

移住後は、「自然に囲まれた場所でファッションの仕事をしよう」と森の中にアトリエを構え、夫婦でアパレルブランド「シゼンデザイン」を立ち上げた。自然を身近に感じてもらえるデザインを意識し、草花や樹木、サンゴなどをモチーフにしたシャツを製作している。

自然をモチーフにしたシャツや雑貨

一方で、最初のころは収入が少なかったこともあり、ジョシュアさんは知人に紹介してもらった地元の林業の会社で働くことになったという。

「林業の仕事を始めてから、〝自分がずっとやりたかった仕事はこれだったんだ″と思いました。大好きな山の中で毎日過ごすことができますし、木や川、動物を眺めることも、高い木に登って作業することも、全部が楽しい。山道をトラックで移動するときに眺める景色も最高です」

ジョシュアさんは2021年に勤めていた会社を退職して独立。アメリカやヨーロッパで発展し、樹木栽培や診断、土壌管理を含めた樹木管理技術であるアーボリカルチャーについて勉強し、2022年には「国際認定樹護士アーボリスト®」の資格を取得した。現在はカルフォフォレストリーという団体を運営し、寺院の敷地、庭園、山でロープアクセス技術**を使って大木の伐採と剪定を行っている。山林の樹木の伐採や剪定を行う傍ら、「人の暮らしの近くにある樹木の手入れにも携わりたい」という思いから、造園業も手がけている。

JR静岡駅ビルの屋上で開催した庭師らの作品を集めたイベントでは、1坪(3・3平方メートル)の坪庭で多彩な造園技術を披露

「ロンドンにいたとき、自然に触れるためにはかなり遠くまで行かなければなりませんでした。しかし、日本は東京でさえ日帰りできる場所に山があります。日本のみなさんに身近にある自然をもっと楽しんでもらいたいですし、木1本にも価値があることを知ってもらいたいです」

林業の仕事に就く人は年々減っているが、持続可能な社会をつくるためには山を適切に管理することが大切。ジョシュアさんは、「今後は樹木医の資格に挑戦してより専門性を高め、自然の価値と自然と暮らす楽しさを伝えていきたいです」と目標を語ってくれた。

静岡県藤枝市の街並み

* 樹木に関わるプロフェッショナルとして、ツリークライミング、樹木に関する知識、樹上レスキュー等を修得して、一定の資格試験に合格した者を指す
** ロープやアンカーなどの装備を使い、身体を支えながら高所で作業する技術