音声広報CD「明日への声」トラックナンバー2 vol.98(令和6年(2024年)7月発行)

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(イントロダクション:女性ナレーター)

相続は、一生に何度も経験するものではありませんが、自分の財産を残すときや、親などの財産を受け継ぐときに必ず発生するものです。ときには大きなトラブルに発展することもあるため、基本的なルールや仕組みを理解して必要な準備を行ったり、家族で話し合ったりできるように、相続の基本についてご紹介します。

(本文:Q.女性ナレーター/A.男性ナレーター)

Q1:そもそも相続とは、どのようなものなのでしょうか?

A1:相続とは、亡くなった人の財産などの権利、義務を残された家族などが引き継ぐことを言い、基本的なルールは、民法で定められています。相続には、大きく分けて、「法定相続」と「遺言相続」があります。遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されますが、遺言書がない場合などには、民法の相続のルールに従って、遺産分割協議により、決められた人が決められた分を相続することになります。

Q2:法定相続で相続人になることができるのは、どのような人ですか?

A2:亡くなった人の配偶者と、子や孫、父母、兄弟姉妹などの血縁関係にある人です。子には養子や法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子も含まれ、胎児も死産の場合を除き相続人に含まれます。これら民法で定められた相続人になれる人を「法定相続人」と言います。なお、内縁関係のように事実婚の状態にある人、離婚した元夫や元妻は法定相続人に含まれません。

Q3:相続人の範囲と順位はどのように定められているのでしょうか?

A3:まず、亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。その上で、血縁関係のある相続人には順位と範囲が定められており、第1順位が死亡した人の子、続いて親、最後が兄弟姉妹となります。順位に従って、まず「配偶者と子」が相続人となり、子や孫がいない場合は「配偶者と親」というように、先の順位の人がいない場合に限って、後の順位の人が相続人となります。また、同じ順位の人が複数いる場合は、その全員が相続人になります。本来相続人となることができる人が、相続の開始時に既に死亡していた場合などは、民法で定めるルールに従ってその人の子などが代わって相続人となります。

Q4:複数の相続人がいる場合は、どのように分配されるのでしょうか?

A4:相続財産は相続人全員で共有することになり、相続財産に対する各相続人の相続する持分は、遺言によって指定された「指定相続分」と、遺言がない場合に適用される「法定相続分」があり、遺言による指定相続分の方が優先されます。

Q5:遺言のない法定相続の場合は、どのように分配されるのですか?

A5:いくつかの例を紹介します。相続人が配偶者のみの場合は全部が配偶者の持分です。配偶者と子の場合は、配偶者が2分の1で子が残りを均等に分けます。配偶者と父母(ふぼ)なら配偶者が3分の2で父母が残りを均等に、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者が4分の3で兄弟姉妹が残りを均等に分けます。同順位の相続人が複数いる場合は、原則として持分を均等に分けます。なお、法定相続分は相続人同士の遺産分割の話合いで合意ができなかったときに適用される分割割合であり、必ずこの割合で分割しなければいけないわけではありません。

Q6:相続人の順位によって割合が変わるのですね。遺産の分け方を相続人同士が話合いで決める場合は、どのような手続きが必要ですか?

A6:亡くなった人の相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意する手続きを「遺産分割協議」と言います。法定相続分や遺言の内容と異なる割合で相続分を決めることも可能です。協議が成立したら、誰がどの財産をどのような割合で相続するのかを記載した「遺産分割協議書」を作成します。

Q7:基本的なルールを分かっていると話合いも進めやすいですね。自分が相続人になった場合は、必ず相続しなくてはいけないのでしょうか?

A7:遺産にはプラスの財産だけでなく、借金などの負債も含まれています。そのため、相続に当たっては3つの選択肢が用意されています。1つ目は、全ての財産を相続する「単純承認」。2つ目は相続によって取得した資産を限度に負債を引き継ぐ「限定承認」。3つ目は全て相続しない「相続放棄」です。なお、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、限定承認の場合は相続人全員で、相続放棄の場合は放棄する相続人が単独で、家庭裁判所へ限定承認又は放棄の申述(しんじゅつ)をしなくてはなりません。

Q8:単純承認以外は手続きが必要なのですね。ところで、相続人ではない親族は、たとえ亡くなった人の療養介護や看病などを長期間にわたって行っていた場合でも、遺産の分配を受けることはできないのでしょうか?

A8:残念ながら遺産の分配はありませんが、無償で療養介護などに貢献し、亡くなった人の財産の維持や増加に特別の寄与をした場合は、相続人に対して金銭の請求をすることができます。相続人との間で協議ができない場合は、家庭裁判所の調停手続などを利用することもできますが、申立てをできる期間が決まっています。

Q9:分かりました。次に、遺言書について教えてほしいのですが、遺言書が存在すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

A9:遺言書を作成すると、民法上相続人に含まれない内縁関係の人や血縁関係にない人などに遺産を分配することができます。また、自分の意思で遺産の分配を決めることができたり、特定の遺産を特定の相続人に相続させたりすることができます。さらに、相続人の間での争いを防止する効果も期待できます。

Q10:遺言書はどのように作成するのでしょうか?

A10:遺言書は、満15歳以上で意思能力があれば、誰でも作成することが可能です。一般的に多く用いられる遺言の方法としては、遺言者自らが手書きで書く「自筆証書遺言」と、公証人が遺言者から聞いた遺言の趣旨を記載して作成する「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は、遺言者本人が、遺言の全文、日付、氏名を手書きして押印します。なお、自筆証書遺言を発見した相続人などは、遺言者の死亡を知った後、偽造や改ざんを防ぐため、開封する前に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。公正証書遺言は検認不要です。

Q11:どのように保管しておくと良いですか?

A11:公正証書遺言は、公証役場で保管され家庭裁判所の検認は不要です。一方で、自筆証書遺言書は自宅で保管すると紛失などのおそれがあり、相続をめぐるトラブルの原因になることがあります。そこで、2020年から、「自筆証書遺言書保管制度」が開始され、法務局で自筆証書遺言書をより安全に、安心して保管できるようになりました。この制度を利用すると、家庭裁判所の検認が不要になったり、遺言者が亡くなった後、通知によって遺言書の存在を相続人などにお知らせできるなどのメリットがあります。2023年には制度が改正され、保管を申請できる法務局の管轄が拡大したり、通知先が複数指定可能となったりするなど、より利用しやすくなりました。

Q12:生前の贈与や遺言などで、遺族の相続分がなくなることもありますか?

A12:亡くなった人は、自身の財産の行方を遺言によって自由に決めることができますが、遺族の生活の保障などのために、生前贈与や遺言でも奪うことのできない一定の制約があります。これが「遺留分」です。遺留分は、相続人が配偶者や子などの場合は法定相続分の2分の1、父母などのみの場合は法定相続分の3分の1であり、兄弟姉妹には遺留分はありません。遺留分を有する相続人が複数いる場合は、遺留分を法定相続分によって分け合います。

Q13:他にも相続に関わる制度があれば教えてください。

A13:亡くなった人の葬儀費用など、必要な支出に対応するため、遺産分割前でも一定の預貯金の払戻しを認める制度や、亡くなった人が所有する建物に配偶者が住んでいる場合、一定の要件を満たせば賃料の負担なく住み続けることができる「配偶者居住権」があります。また、2024年4月1日から不動産の相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。また、2024年4月1日より前に不動産を相続した場合であっても、相続登記がされていないものは、義務の対象となります。正当な理由がないのに相続登記をしない場合は、10万円以下の過料の適用対象となりますので、忘れずに登記しましょう。なお、政府広報オンラインにおいても、相続について詳しく紹介していますので、「政府広報オンライン 相続の基本」で検索してみてください。

(エンディング:女性ナレーター)

大切な財産をトラブルなくスムーズに引き継ぐためにも、相続の基本的なルールや仕組みを理解し、必要な準備を行ったり、家族で話し合ったりすることが大切です。いつか来るご自身やご家族が亡くなった後のことを、是非この機会に話し合ってみてください。

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