VOL.194 JULY 2024
JAPANESE SMALL AND MEDIUM ENTERPRISES LEADING THE WORLD 40分の1ミリの超極細糸から織られる、世界最軽量級の織物

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日本では「天女てんにょ羽衣はごろも」、海外では「アマイケスーパーオーガンザ」の名で知られる合同会社アマイケが開発する超軽量で極薄の織物。

Photo: 小松マテーレ*

髪の毛の5分の1ほどの細さの超極細糸は、静電気で切れるほど繊細で、生地として織り上げるのは非常に困難だった。合同会社アマイケは、その超極細糸の製織技術を数年がかりで開発。薄く、軽く、光沢のあるこの織物は、国内外のファッションブランドを魅了し、洋服や舞台衣装などの素材として広く使われている。

空気をはらんで柔らかく動く極薄の織物。日本では「天女てんにょ羽衣はごろも」、海外では「アマイケスーパーオーガンザ**」の名で知られるこの布は、髪の毛の1/5ほど(約40分の1ミリ)の細さの極細糸から織られ、重さは1平方メートル(100cm×100cm)当たり5グラムと、驚くほど軽い。超極細糸の製織技術を開発した合同会社アマイケの、天池あまいけ 勇揮ゆうきさんに話を聴いた。


透明感と光沢感のあるスカーフ。同社の製品は、羽田空港などで手に入るという。
Photo: 小松マテーレ

「この糸はもともとプラズマテレビ***用資材として開発されましたが、細すぎてすぐに切れてしまい、織ることが困難でした。織りの難しい新素材について、多数の製織技術の開発実績があった当社は、糸メーカーからの相談を受け、最新鋭の織機を導入していたので製織技術の開発に着手したのです」

超極細糸が切れる大きな原因は、織りの摩擦で生じる静電気にあるとつきとめ、静電気を抑えるため、織機を置く区画の温度・湿度管理を徹底。同時に、糸の密度や織り方を様々に変えながら、試作と評価を繰り返した。織機についても、超極細糸を織るために部品の交換や改造を進めたという。


織機にかけるための経糸たていとを巻く工程。1枚の生地で必要なたて糸は10,000本。
Photo: 小松マテーレ

ピンセットのようなもので糸をつかんで運び、緯糸よこいと経糸たていとに織りこんでいく。
Photo: 小松マテーレ

「2006年、数年がかりで極薄織物の製織に成功し、設備を増設、生産を開始しましたが、約1年後に依頼元が破綻してしまいました。そこで、ファッション分野をターゲットに、自社で製品開発から販売まで行うことを決意したのです」

ファッション用途には染色や縫製も必要であることから、専門の業者に外注したが、糸が特殊すぎて外注先ではうまく扱えない。必然的に、染色や縫製の技術も自社開発することになった。染色剤の種類や水分量、生地の投入量などを調整しながら、試行錯誤を重ねた。縫製用の糸については、縫い目が目立つことを避けるため、極薄生地に適した糸から開発し、ミシンの調整も地道に行った。その結果、2010年頃、製織から染色、縫製までの一貫製造が可能になった。


2色染めにより玉虫色効果を表現。
Photo: 小松マテーレ

「商品を海外ブランドに見せたところ好感触を得たため、海外の展示会にも出展。そこから海外の得意先が増えていきました。独特の動きや光沢感が評価され、近年は欧州のファッション系の有名ブランドやパリ・オペラ座のなどの舞台衣装、フィギュアスケート選手の衣装などにも使用されています」

実は今、同社は、2024年1月に起きた大地震(能登半島地震)の後遺症に苦しんでいる。地震で工場や設備が破損して、一時は生産も出荷も止まった。現在は生産を再開しているが、工場の修繕は終わっていない。しかし、歩みを止めてはいられないので、クラウドファンディングサービスで協力を募っている****。

「これからも当社の独特な生地を生かした新商品を、お客様とコミュニケーションをとりながら開発し、お客様に喜んでいただきたいと思っています」と、天池さんは力強く語った。


多くの開発生地見本の前で、笑顔で語る天池さん。
Photo: 小松マテーレ

* 合同会社アマイケは小松マテーレ株式会社のグループ会社
** オーガンザとは薄地で軽く、透けて見えるハリのある織物のこと。これに対して天女の羽衣(アマイケスーパーオーガンザ)は光沢感と柔らかさがより強い織物。
*** 1990年代後半に登場した、プラズマディスプレイを用いた薄型・高精細のテレビ。大型テレビの主流と見られていたが、2000年代後半になり液晶ディスプレイの大型化が進むと、価格や省エネ性能の点から、主役は液晶ディスプレイに移った。
**** 新しいモノや体験の応援購入を促すクラウドファンディングサービス「Makuake」に「天女の羽衣」のスカーフとポケットチーフを出品中。


By SAKURAI Yuko
Photo: KOMATSU MATERE Co., Ltd.

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