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August 2022

京都嵯峨野の竹林を通る二つの道

  • 竹林の散策路を行く人力車
  • 京都の竹林の小径。道には竹穂垣が整備されている。
  • 竹林の小径から見上げる高くそびえる竹
  • 竹林の散策路で人力車を楽しむ訪問客
竹林の散策路を行く人力車

竹林とその中を通る「竹林の小径」で有名な京都市西部の嵯峨野*。ここに、もう一つ、「竹林の散策路」と呼ばれるタケの美しさを堪能できるスポットが2015年にできた。

京都の竹林の小径。道には竹穂垣が整備されている。

京都市の西部に位置する嵯峨野は美しい竹林で知られ、特に嵐山の竹林は有名である。JR京都駅から電車で約17分、JR嵯峨嵐山駅で下車し、西へ10分ほど歩くと竹林にたどり着く。そこには、竹林の中心にある野宮神社から天龍寺の北門を通り美しい大河内山荘へ抜ける約400メートルの小道がある。この「竹林の小径」は、京都で最も人気の観光スポットの一つだ。

近年、天龍寺近くの野宮神社から北に伸びる、竹を楽しめるもう一つの道が造られた。その「竹林の散策路」は、約3,800平方メートルの青々とした竹林の間を縫う、道幅の広い散策路となっている。竹林の小径よりも、ゆったりと楽しめる道である。

どちらの道も、天を覆うように伸びたタケの枝の間から差し込む木漏れ日が揺れ、風と葉擦れの音に包まれた非日常的な空間である。ただ、竹林の散策路では、散策したり、ガイド付きの人力車ツアーに参加したりすることができる。

竹林の小径から見上げる高くそびえる竹

「人力車に乗ってゆっくりと竹林を巡られたお客様から、『タケの葉が風に揺れる音やタケの匂いにたいへん癒やされた』、『竹林の間を吹き抜ける風が気持良い』などといった言葉をいただきます。実はお客様だけではなく、人力車を引く私達も竹林を通り抜けながら、五感が研ぎ澄まされるような感覚を楽しんでいます」と語るのは、人力車を運営するえびす屋京都嵐山總本店の加藤誠一さんだ。

えびす屋は、1992年に嵐山で創業し、嵐山の渡月橋から嵯峨野の竹林周辺を人力車で案内している。今では全国の観光地でサービスを展開し、オンラインや多言語での予約が入るほど人気を得ている。しかし、竹林の小径の案内は、坂道や細い道が多く人力車には不向きな点もあった。

そこで、えびす屋は2012年の創業20周年を機に、竹林の小径に隣接する広めの竹林を、人力車でもゆっくりと楽しめるよう、整備に取り組むことにした。専門家の助言を受けながら、従業員が草刈りやタケの間引き作業を行い、2015年秋に完成したのが竹林の散策路だ。開設当時から同社と京都市で無償の管理協定を結び、日常の維持管理を行っている。

竹林の散策路で人力車を楽しむ訪問客

「竹林の散策路には、真竹が自生し、人力車でも徒歩でも周回できるように配慮しました。タケと人の距離を近く感じてもらうために、竹林の小径では設けられている穂垣(ほがき。竹の枝で組んだ竹垣)は設けないことにしました。その甲斐あって、今では、散策路では多くの人々が休憩したり、ゆっくりと写真を撮ったり、思い思いにタケを感じて楽しまれています」と加藤さんは話す。

嵯峨野の青々とした竹林は夏でも涼しさをもたらし、冬は青々とした竹と雪とのコントラストが美しい。一年を通してタケは訪れる人に京都の異なった印象を与えてくれる。

* 京都府京都市右京区の地名。太秦・宇多野の西、桂川の北、小倉山の東、愛宕山麓の南に囲まれた付近に広がる広い地域。

竹林の小径(左)と竹林の散策路(中央上)を示した地図