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July 2022

街と人のための照明デザイン

  • ライティング プランナーズ アソシエーツが照明デザインをした「国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館」の水盤(2003年竣工)
  • ライティング プランナーズ アソシエーツが「オーガニックな光」をデザインしたシンガポールの「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」
  • 株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツの代表取締役の面出薫さん
  • 『Nightscape2050 –未来の街–光–人』(2015年)のために制作された都市照明の未来像
ライティング プランナーズ アソシエーツが照明デザインをした「国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館」の水盤(2003年竣工)

照明デザイナー、面出薫(めんで かおる)さんは、住宅照明から建築照明・都市・環境照明の分野まで幅広い活動で知られ、数々の賞を受賞している。面出さんに自身の照明デザインの仕事について尋ねた。

株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツの代表取締役の面出薫さん

「照明デザイン」は、一般には光を使って空間を演出する仕事のことを指すが、その内容は非常に多岐にわたる。部屋や建築の照明のデザインはもちろん、より広い都市環境に関わる照明のデザインまでそこには含まれている。

照明の主流が電球や蛍光灯からLEDやレーザー光源へと大きく変化する中、日本を代表する照明デザイナーの面出薫さんは、2015年に巡回展『Nightscape2050 –未来の街–光–人』を開催し、エネルギー消費や人と光との関わりといった観点で、照明の未来の姿を探った。

『Nightscape2050 –未来の街–光–人』(2015年)のために制作された都市照明の未来像

「明かりが変わると空間の雰囲気は一変しますよね。たとえば、人の表情が生き生きとしたり、テーブルの料理が美味しそうに見えたり、街並みがおしゃれになったり……。もちろん、その逆もあるわけですが、私たちの仕事で何より大切なのは、照明を工夫することで人を幸せにすることだと思うのです」と面出さんは言う。

面出さんは、建築照明デザインを中心として幅広く照明デザインの業務を行う株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツを1999年に立ち上げ、世界各地で照明デザインを手がけてきた。例えば、東京国際フォーラムやJR東京駅丸の内駅舎、シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイなどなど、それぞれの街のランドマークになっているものも少なくない。

2012年に開業したガーデンズ・バイ・ザ・ベイでは、夜間、光をエンターテイメントとし利用したインスタレーションで多くの人々を魅了し、日中の展示が主だった植物園に新たな可能性をもたらした。

ライティング プランナーズ アソシエーツが「オーガニックな光」をデザインしたシンガポールの「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」

また、2003年に竣工した国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館の照明デザインは、面出さん自身特に印象に残っているという。

「この建物を設計した栗生明(くりゅう あきら)さんは、水を求めながら亡くなっていった多くの原爆死没者を慰霊するため、建物の周囲に御影石で直径29メートルの水盤を設計していました。私はその水底に、長崎での原爆犠牲者の数とほぼ同じ7万個の光ファイバーによる光の粒を埋め込んだのです。そして、実際に明かりを灯してみると思いがけないことが起こりました。吹き抜ける風で水面が波打ち、光が揺れ動き、予想を遙かに超えた美しさが生まれたのです」

柔らかに照らし出される水盤とともに、平和祈念館は亡くなった人々への祈りが表現されたとみるべきだろう。

街は、光の活用によって表情が変わり、使う照明の種類によって、そこで生きる人の気持ちにまでも変化をもたらす。面出さんは、照明のプランとデザインで人々を感動させる方法を、日々探り続けている。