Skip to Content

April 2022

幸福と長寿の花「フクジュソウ」の群生地

  • 福島県喜多方市山都町の沼ノ平地区で咲くフクジュソウ
  • 山都町の名物の寒晒しそばと天ぷら
  • フクジュソウの群生
福島県喜多方市山都町の沼ノ平地区で咲くフクジュソウ

日本では、ラーメンと古い蔵がたくさんある街として知られている福島県喜多方市(きたかたし)の沼ノ平(ぬまのたいら)地区には、日本最大級のフクジュソウ(福寿草)の群生地がある。

フクジュソウの群生

3月中旬から4月中旬にかけて、東北の冬枯れた野が一面黄金の絨毯に変わる―。それは約5ヘクタールに100万株以上のフクジュソウが咲く喜多方市山都町(やまとまち)の沼ノ平地区で、日本最大級の群生地だ。フクジュソウ(キンポウゲ科の多年草)はこの山間の地に春の到来を告げ、その鮮やかな黄色に人々の喜びが満ちる。

この群生地には、「ゆきげ*の小径」「ひだまりの小径」というの二つの散策コースが整備され、新型コロナウイルスの流行前は、たくさんの人々が訪れては花を愛でたり、俳句をひねったり、それぞれの春を満喫していた。

「ゆきげの小径」を登って行くと、斜面にフクジュソウが太陽に向かって花を咲かせている様子が良くわかる。少し歩くと更に視界が開ける。

「見た途端、誰もが『わーっ』と歓声を上げるような見応えのある群生地が現れます。フクジュソウは花びらに光沢感があって、陽の光の加減によっては花びらが光を反射してキラキラとまばゆく輝くので、まるで黄金の絨毯のようにも見えるんですよ」と語る、このエリアを管轄する喜多方市山都総合支所の担当者の顔もほころぶ。

「ひだまりの小径」は、ゆきげの小径をぬけた集落から長松寺(ちょうしょうじ)へと続く道で、フクジュソウが咲き誇る。寺の境内から眺めるフクジュソウに覆われた斜面もまた美しい。

冬の間、この地域はたくさん雪が積もる。春の日を浴びる斜面だけではなく、日影に残る雪から顔を出すフクジュソウにも出会えるだろう。フクジュソウが咲くころには、アズマイチゲの白い花、オトメエンゴサクの青い花、カタクリの紫の花も咲きはじめる。そんな山野草が山間の里を彩る。

「喜多方市はラーメンで有名ですが、実は、山都町はそばが名物です」と喜多方市の担当者は話す。3月から4月にかけては、この町ならではの寒晒(かんざら)しそばが食べられる。寒晒しそばは、冬の冷たい水と風にさらしたそばの実から作られ、弾力ある食感と甘みが特徴である。

山都町の名物の寒晒しそばと天ぷら

「寒晒しそばは昔、徳川将軍家に献上されたとも伝わります」と担当者は話す。「フクジュソウの群生地は、町の中心部から10キロメートルほど離れた場所ですが、そばとともに、『幸福』と『長寿』を意味する文字を当てる縁起の良い花**が群れ咲く様子を、新型コロナウイルス感染症の流行収束後、見に来てください」

そう語る担当者も、その季節を心待ちにしている。

* 「ゆきげ」とは、雪がとけることを意味する。
** 日本語の名称は、幸福を表す「福」と長寿を表す「寿」を当てる。