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March 2022

可睡斎ひなまつり

  • 秋葉総本殿可睡斎内の迎賓施設「瑞龍閣(ずいりゅうかく)」に飾られた32段約1200体の雛人形
  • お内裏様とお雛様
  • 瑞龍閣の会場に続く階段に飾られた雛人形
  • 「可睡斎ひなまつり」開催中に廊下に飾られる雛人形
秋葉総本殿可睡斎内の迎賓施設「瑞龍閣(ずいりゅうかく)」に飾られた32段約1200体の雛人形

開山されて約620年の静岡県袋井市(ふくろいし)の古刹「可睡斎(かすいさい)」では、例年1月から3月の間「ひなまつり」が開催され、日本最大級、約1200体の雛人形が32段の雛壇に飾られる。その圧巻な光景には、人形へも感謝する心が込められているという。

瑞龍閣の会場に続く階段に飾られた雛人形

3月3日の “雛(ひな)祭り”は、女の子の健やかな成長と幸せを願う伝統行事として日本人に親しまれている。女の子がいる家庭では、雛祭りの日が近づくと一般に「お内裏様とお雛様」と呼ばれる雛人形を家の中に飾り、桃の花や白酒、ひし形のもちを供えて、特別にちらし寿司や蛤の吸い物をいただいて祝う習慣がある。昔の日本の暦(旧暦)では、桃が開花する時期に当たることから “桃の節句(季節の節目となる日)”とも呼ばれ、春の到来を告げる行事ともなっている。

雛祭りの起源は諸説あるが、一説では平安時代(8世紀末~12世紀末)、紙や草木で作った人形で自分の身体をなでて病気や災いを移し、身代わりとして川に流したことから始まったとされる。そのため、雛人形を家の中に飾るようになっても、その人形を親から子へ譲ったり、姉妹で共有することは、災いを引き継ぎ、共有することになるためタブーとされた。そして、女の子が無事に成人することによって、その役目を終えた雛人形の多くは、寺院に預けて供養されてきた。

お内裏様とお雛様

1401年に開山し、10万坪(約33ヘクタール)の境内に多くのの建造物がある静岡県袋井市の由緒あるお寺「秋葉総本殿 可睡斎(かすいさい)」には、全国から役目を終えた雛人形が寄せられる。

可睡齋の太田章文(おおた しょうぶん)さんは「長年にわたってお子様の成長を見守り、身代わりとなって厄災を引き受けてくれた雛人形を供養してほしいというご依頼が、現在でも年間300~400件ほどあります。お引き取りした雛人形は、お寺の方でお経をあげて、人形に対しても感謝をしてお焚きあげします。ご家庭で大切にされた雛人形は、まだきれいなものが多いので、その前に、きちんと飾って供養しようと、2015年から『可睡斎ひなまつり』を毎年開催するようになりました。人形へも感謝する心、ものを大切にする心もお伝えできればと思っています」と、言う。

「可睡斎ひなまつり」開催中に廊下に飾られる雛人形

「可睡斎ひなまつり」は例年1月1日から3月31日に開催される。最大の見どころは、国の登録有形文化財である総檜造りの2階建て迎賓施設「瑞龍閣(ずいりゅうかく)」の2階の大広間に飾られる、32段約1200体の雛人形だ。大広間のほかに、廊下などにもきらびやかな雛人形が飾られる。また、屋外の50段ほどの階段に飾られる日もあり、境内全体が華やかな雰囲気になる。まつりの期間中、3月には、瑞龍閣1階の室内ぼたん庭園は、約20品種、70鉢のぼたんの花が満開となり、まつりに花を添える。

「大広間の雛人形は、一体一体の顔がすべて隠れることなく見えるように飾っています。その数の多さはもちろん、約1200体もの雛人形が整然と飾られている美しさに感動される方が多いですね」と太田さんは続ける。また、袋井市では可睡齋ひなまつりの開催期間に合わせて、市内の商店や企業、施設などに雛人形を飾り、地域が雛祭り一色になる「まちじゅうひなまつりプロジェクト」が催されている。

可睡斎に並べられた雛人形は、人形の美しさと、人形に対する感謝の思いを映し出している。