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February 2022

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盆栽のさらなる魅力を海外に伝える

  • 森さんが手掛けた作品
  • ワシントンの日本大使館広報文化センターで盆栽の剪定を披露する森隆宏さん
  • ロサンゼルスのジャパン・ハウスで、幅広い年代の参加者にプレゼンテーションする森さん
  • シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイで開催されたワークショップでの森さんと参加者
  • カナダのバーナビーの日系センターで、杉の盆栽の手入れを披露する森さん
ワシントンの日本大使館広報文化センターで盆栽の剪定を披露する森隆宏さん

盆栽師の森隆宏さんは、2019年7月から9月、文化交流使として、カナダ、アメリカ、オーストラリア、シンガポールの4か国8都市を訪れた。盆栽に関する講演やワークショップを通して、各国の多くの人々と交流した体験を森さんに語ってもらった。

森さんが手掛けた作品

樹木を器に植え、自然の木々の姿に見立てて形を作り込み、鑑賞する盆栽。日本には専門の美術館もあり、盆栽は人々の間で長年愛好されてきた。その盆栽は、1990年代以降、世界中に愛好者の輪が広がっている。

盆栽の魅力について、盆栽師の森隆宏さんはこう語る。「盆栽にあるのは『凝縮の美』です。まるでそこに木が自然に生えているかのように、器の中にぎゅっと小さな世界を作ります。サイズは小さくても、葉を剪定したり、幹や枝の形を整えることで、木が雄大に見えるように作りあげることができる、そこが面白いのです」

盆栽を生業としている人は、家業を継ぐ人が多いというが、森さんはそうではなかった。森さんが盆栽の道を志したのは、大学を卒業した後。その大きな理由の一つは、日本ならではの文化を身に着けて、それによって海外で活躍したいということだった。そして5年間ほど修行して盆栽師として独立したが、ほどなく権威ある日本盆栽協会主催「日本盆栽国風(こくふう)展」で最高賞・国風賞を受賞した作品を手がけた。盆栽師として認められた森さんは、当初の志のとおり海外での盆栽の普及にも取り組むようになった。コロナの影響が出る前は、特に、毎春、アメリカのカリフォルニア州において講習会の開催など、盆栽の普及活動に努めていた。

ロサンゼルスのジャパン・ハウスで、幅広い年代の参加者にプレゼンテーションする森さん

そんな森さんが盆栽に関する文化交流使に指名されたのは、2019年7月から9月にかけてだ。森さんは文化交流使として、カナダ、アメリカ、オーストラリア、シンガポールの4か国8都市を訪れた。現地で催された講演会で、盆栽の手入れや表現方法など、その基本について披露した。日本には推定樹齢が1000年を超える盆栽があるという話に参加者はとても驚いていたという。この驚きに、森さんは、水やりはもちろん、適切な時期に植え替え根がしっかり張るように整えたり、愛情を注いで木の健康を保つと、世代を超えて引き継がれる盆栽になると応えた。さらに、現地の素材で、剪定や針金を使った枝ぶり調整の実演では、枝を半分ほど剪定し、葉がかなり少なくなっても逆にイキイキと大きく見える盆栽に仕上げてみせた。「私のパフォーマンスを目の当たりにした会場のみなさんは、盆栽への理解が一気に進んだようでした」と森さんは話す。参加者が自ら育てる盆栽を持ち寄ったワークショップでは、森さんからアドバイスを受け、参加者たちは、それぞれに手入れに挑んだ。

盆栽師の剪定(せんてい)は軽やかで、誰でも簡単にできそうに思えるが、剪定後の姿をイメージしながら慎重にハサミをいれても、思う通りに仕上がらないこともある、非常に奥深いものなのだという。

シンガポールのガーデンズ・バイ・ザ・ベイで開催されたワークショップでの森さんと参加者

「実は、盆栽は自然が先生なのです。風雪に耐える松、たわわに実をつける柿の木など、自然にある姿がお手本になります。だから盆栽の世界ではよく『自然に習う』という言葉が使われます。木を形作る、ということの奥にある日本人の自然との向き合い方のようなものを、盆栽を通して世界に伝えていきたいと思っています」と森さんは言う。

文化交流使の活動を通じて、森さん自身にも新たな発見があったという。日本では盆栽を屋外で育てることが多いが、訪問先の一つ、シンガポールでは室内でLEDライトを用いて盆栽を育てているケースがあり、非常に驚いたと言う。

カナダのバーナビーの日系センターで、杉の盆栽の手入れを披露する森さん

「赤や青のLEDライトを駆使すれば盆栽を育てることができると分かったことは、面白かったです。この方法なら、例えば、極寒の地や砂漠のようなこれまで盆栽には不適とされてきた環境でも、盆栽を楽しめるようになるのかもしれません。私には、盆栽の可能性がとても広がったように感じました」

文化交流使の経験を活かし、世界中でより多くの人々が盆栽を楽しむことを目指し、森さんは、これからも機会があれば世界に向けて盆栽の魅力を発信する意欲であふれている。