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  • データセンターの内部
  • サーバー冷却に除排雪を活用したデータセンター
  • 冬の期間、WDCのサーバーの廃熱を供給することで室内が15度から20度に保たれている温室
  • WDCのサーバーの廃熱を利用して養殖したアワビ
  • 温室栽培されている小松菜

January 2022

雪でデータサーバーを冷やす

サーバー冷却に除排雪を活用したデータセンター

2014年から5年間、北海道美唄市(びばいし)でデータサーバーの冷却に雪を利用する世界初の実証実験が行われた。同市は、現在、その成果によって、データセンターの事業化とその拡大への取組を進めており、それは、日本の雪国における地域活性化を進める上で大きな期待を集めている。

データセンターの内部

北海道中部に位置する(美唄市人口約2万人(2021年11月末現在))は、ひと冬の累計積雪量が10メートルにも達する豪雪地帯である。雪が降る季節になると、通勤、通学のための交通確保、建物の損壊防止の必要性から、同市が負担する除雪*・排雪**に要する費用は年間4億円(米ドル換算で約350万ドル(2022年1月20日現在のレート換算))にも及ぶという。しかも、巨額の経費をかけて除雪、排雪した雪は、これまで、有効に再利用する手段はなく、言わば厄介ものであった。しかし、最近、そんな雪を集めて貯蔵し、有効利用する方策が確立されつつある。その一つが、データセンターのサーバー冷却に雪を利用するというものだ。

冬の期間、WDCのサーバーの廃熱を供給することで室内が15度から20度に保たれている温室

そのきっかけとなったのは、1997年に地元の有志が立ち上げた美唄自然エネルギー研究会だった。室蘭工業大学の媚山正良(こびやま まさよし)名誉教授を技術顧問とする研究会で、雪冷房施設などに、雪の冷たさをエネルギーとして利用(雪冷熱エネルギー)する様々な方策を検討してきた。その一つが、2008年に提唱したサーバーを雪で冷却するデータセンターの構想だった。膨大なデータを扱うサーバーは高い熱を発生し、そのまま放置するとサーバーに負荷がかかり、故障を誘発し、耐久年数が低下することが指摘されている。そのため、常にセンター内を冷やす必要がある。通常、空調設備(冷房)を用いて冷やすが、それにかかる経費は、サーバーを動かす電気代に匹敵する。この冷房に、除雪、排雪した雪を雪冷熱エネルギーとして活用する技術の開発を目指してきた。

WDCのサーバーの廃熱を利用して養殖したアワビ

2014年から5年間、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けて実証実験を続けた結果、泥やゴミ、融雪剤などが混じった除雪、排雪した雪を、そのままエネルギーに還元してデータセンターへ送る技術が開発された。この技術は、既存のデータセンターに比べて、冷房コストを半分以下に抑えられることができるという。しかも、CO2排出量ゼロの100パーセント再生エネルギー技術であることが特徴だ。これを受け、美唄市において、株式会社ホワイトデーターセンター(以下「WDC」)が設立され、2021年からデータセンターの事業化が始まった。現在、20ラック***のサーバーが稼働するセンターに、市が集めた雪でできた山からパイプで冷却不凍液****が送られ、それをもとに冷房を行っている。

温室栽培されている小松菜

WDCの伊地知晋一(いじち しんいち)代表取締役社長は、今後の展開を語った。「次に建設する新たなデータセンターは、現在の規模の10倍、200ラックのサーバーを稼働する予定です。エネルギーを無駄なく使うため、冬季はサーバーの廃熱を利用した、温室で野菜栽培や魚貝類の養殖を実験的に行っていますが、これらもデータセンターの規模拡大にともなって本格化していくつもりです」

美唄市やその周辺地域の除排雪は年間20万トンに上り、これを活用すれば将来的には3000ラックのサーバーが冷却できるという。雪をそのままエネルギーとしてデータセンターを運用する、更にデータセンターの排熱も無駄にすることなく農業や漁業にも活用する、この美唄市の実例は、日本の雪国における地域活性化の切り札として大きな期待を集めている。

* 除雪とは、道路上の雪をかき分け、通行可能なスペースを確保する作業
** 排雪とは、雪をダンプトラックに積込み、雪堆積場へ運搬する作業
*** ラックはデータセンターなどで、サーバーやルータスイッチなどを収納する専用棚。20ラックはサーバーのサイズや周辺機器によるが、概ね40社分のデータを格納可能に相当する。
**** 寒冷地で使用する凍結しない液体