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  • 「スズメバチ 2.6」。彼の代表作の一つ。高さ5センチメートル。幅13センチメートル。
  • 神谷哲史さん
  • 「龍神3.5」。神谷哲史さんの作品で、最も複雑な作品の一つとして知られている。高さ20センチメートル。
  • 「ゴジラ2016 アナザー」。高さ23センチメートル。折り図では表現できない変則的な仕上げを多用した作品。
  • 英語と日本語の解説がついている神谷さんの作品集

December 2021

超複雑系の折り紙

「龍神3.5」。神谷哲史さんの作品で、最も複雑な作品の一つとして知られている。高さ20センチメートル。

神谷哲史(かみや さとし)さん彼の折り紙の作品は、「超複雑系」と呼ばれ、国内外に数多くのファンがいる。幼いころから折り紙を始めた折り紙作家、神谷さんは、超複雑系の多くの作品を世に送り出してきた。

神谷哲史さん

折り紙は、シンプルな形のものから、抽象的な図形だけの表現など様々な種類がある。その中でも、超複雑系と呼ばれる作品を生み出す作家がいる。その第一人者として知られるのが、神谷哲史さんだ。超複雑系の折り紙は、1枚の紙から非常に複雑で精巧な作品を折りあげる折り紙だ。神谷さんの作品は、一見すると、1枚の紙からつくられているとは到底信じられない精緻さを持ち、見る者はそこに強烈な印象を受ける。その精緻さを極めた作品は、「折り紙で作ることができる形」ではなく「自分が折り紙で作りたい形」を作るという神谷さんの想いによるものである。神谷さんにとって、作品が複雑であることは、目的ではなく結果であり、「複雑すぎて折り紙でそんなことができるわけがない」と言われても、技術的な改良を積み重ねることで、精緻な作品を生み出していく。

「スズメバチ 2.6」。彼の代表作の一つ。高さ5センチメートル。幅13センチメートル。

1981年、愛知県名古屋市生まれの神谷さんは、3歳の頃には折り紙を始め、親によく折り紙用の紙を買ってもらったり、近所の図書館で子ども向けの折り紙の本を借りたりしていた。10歳の頃には、もう、大人向けの折り紙の本を読むようになり、かなり複雑な折り紙を作るようになっていたという。

「いつから超複雑系の折り紙を作りだしたかは、自分でも明確ではありません。本に載っている作品に触発されて独自の作品を生み出したり、今までにない形を作り出したり……、そんなことを楽しみながら繰り返しているうちに、いつしか自分の作品が本や雑誌で紹介されるようになっていったのです」と神谷さんは少年時代を振り返る。

そんな神谷さんの名を一躍有名にしたのは、「テレビチャンピオン」という人気TV番組だった。この番組で企画された折り紙王選手権に参加した神谷さんは、1999年17歳での初出場から優勝を続け、折り紙王として日本のお茶の間で広く知られた存在になっていく。また、2000年から2年間はアメリカにも留学して、英語を学びながら現地の作家や愛好家と交流して多くの経験を積んだ。質の良い紙が手に入りにくいアメリカで、自分の手で紙を漉いて作る作家にも学び、あらためて折り紙における紙の大切さを知ることになった。

「ゴジラ2016 アナザー」。高さ23センチメートル。折り図では表現できない変則的な仕上げを多用した作品。

これまでに神谷さんが制作してきた折り紙作品の一部は、美しい写真や折り方を図示した精緻な折り図、日本語と英語の解説が付いた3冊の作品集にまとめられていて、それらは超複雑系ファンのバイブルにも匹敵するものになっているという。特に、神谷さんが手がけた最も複雑な作品の一つとされる「龍神3.5」(2005年制作)は、2メートル四方の紙1枚のみを用い、約1か月がかりで完成した大作だ。世界一複雑な折り紙の一つとの呼び声が高い。また、海外では神谷さんの作品は、アートとしての評価が非常に高く、代表作の一つ「スズメバチ」という作品は、フランスの高級ブランド、エルメスのショーウインドウに飾られたこともある。

「折り紙の一番の面白さは、手を加えれば加えただけ姿を変えていくことです。だから思い通りの作品が実際に完成した瞬間よりも、そこに至る過程で、自分のイメージのとおりになりそうだと感じながら手を動かしている時の方が私は楽しいのです」と神谷さんは語る。彼ほど折り紙を心から楽しんでいる人はいないのかもしれない。

英語と日本語の解説がついている神谷さんの作品集

誰も考えたことのない折り紙の形や表現方法は、まだたくさんあるに違いないと神谷さんは言う。新しい折り方を編み出していくこと、折り紙の可能性を広げていくことがいつも神谷さんの目標なのだ。