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  • 清流で育ったわさび(茎の下の部分が根茎)
  • 静岡水わさびの伝統栽培である「畳石式わさび田」
  • 春に咲くわさびの白い花
  • すりおろしたわさびの根茎(上)を刺身に添える(下)

May 2021

清流で栽培されるわさび

清流で育ったわさび(茎の下の部分が根茎)

日本固有の品種と言われている「わさび」は、和食には欠かせない香辛料である。静岡県では、湧水を使った伝統的な手法でわさび栽培が行われ、世界農業遺産の一つとして認定されている。

静岡水わさびの伝統栽培である「畳石式わさび田」

寿司、刺身、そば、お茶漬けなど、様々な和食に欠かせない香辛料にわさびがある。元来、日本各地の山間地で野生から採取されてきたわさびは、根茎部分をすりおろして料理に添えたりするが、ツンと鼻に抜ける清涼な辛味が特徴である。

今から約400年前、現在の静岡県静岡市の有東木(うとうぎ)地区を見下ろす標高1504メートルの佛谷山(ぶっこくさん。通称わさび山)の渓谷に生えていた野生のわさびを見つけた人々が、集落に持ち帰り、湧水源付近に植えたのが、その栽培の始まりと伝わっている。

静岡県によれば、肥料や農薬をほとんど使用しない伝統的なわさびの栽培にとって大切なのは、養分を多く含んだ冷たく豊富な湧水なのだと言う。

静岡県は、多量の降雨や地質に恵まれており、わさび栽培に適した13度前後の湧水が年間を通じて豊富に出る地域があることで、わさびの有数の産地になった。さらに、有東木地区から南東に位置する伊豆半島にわさび栽培が伝わった際に「畳石式わさび田」と呼ばれる独特の栽培方法が確立した。

春に咲くわさびの白い花

「畳石式わさび田」は、下層の大きな岩から上層へ徐々に小さな石を積み上げ、表層部は砂礫の棚田状になっている*。そこに豊富な湧水を流すことで、不純物がろ過され、水温が安定し、わさびの育成に必要な栄養分や酸素の供給が可能になる。こうして、各地で、わさびの安定生産が可能になった。

静岡県のわさび田は、それを取り巻く自然環境の保全と伝統的な栽培法が評価され、2018年、FAO(国連食糧農業機関)から、世界農業遺産に認定された。

すりおろしたわさびの根茎(上)を刺身に添える(下)

わさびは、年間の温度差が少ないほど生育が早く収量も多くなる。そのため、日光による水温変化を抑える必要がある場所には落葉高木樹「ハンノキ」が多く植えられ、木陰をつくる工夫がされている。わさび田を流れ落ちる清らかな水と水辺を覆うわさびの葉の緑が織りなす景観は、実に清々しい。

静岡県の担当者におすすめのわさびの食べ方を聞いてみた。「握り寿司が一番と言いたいところですが、わさびそのものの風味を味わうこともおすすめします。白ごはんにすりおろしたわさび、かつおぶし、醤油をかけたわさび飯がおすすめです。チューブ入りのわさびもありますが、家庭で根茎からおろしわさびの味をもっと楽しんもらいたいと思っています。また、私達担当者も、世界農業遺産として世界に認められた伝統栽培を保全・継承し、美しい風景を守っていくように地域一丸となって取り組んでいきます」と話す。

* https://shizuoka-wasabi.jp/about/