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  • 2人の女神様“吉祥天”と“弁財天”が、双六(サイコロを使うボードゲーム)をしている場面の彫刻
  • 斎藤実盛像

April 2021

歓喜院聖天堂:精緻な彫刻と桜の寺院

聖天堂と桜

国宝「歓喜院聖天堂」は、美しい彫刻と春の桜で名高い。

妻沼聖天山歓喜院

東京都に隣接する埼玉県熊谷市の「妻沼聖天山歓喜院」(めぬましょうでんざんかんぎいん。以下「歓喜院」)」は、1179年に創建された仏教寺院である。平家物語に登場する、12世紀に活躍した、高名な武将の斎藤実盛(さいとう さねもり)が、晩年、自ら信仰している守り本尊である大聖歓喜天(別名「聖天さま」)を「人々の心の拠り所」とするために寺院に祀ったことに始まる。

国宝に指定されている本殿「聖天堂(しょうでんどう)」は、金色や朱色で彩られ、更に極彩色の精緻な彫刻で埋め尽くされており、見飽きることがない。幾度かの火災や洪水被害からの再建を経て、現在の本殿は、1779年に完成したものである。院主の鈴木英全(えいぜん)住職は語る。

2人の女神様“吉祥天”と“弁財天”が、双六(サイコロを使うボードゲーム)をしている場面の彫刻

「日本の名高い国宝建築の多くは、その時代の権力者によって建てられたものが多いが、現在の聖天堂の建物は、庶民の浄財のみで建てられました。当時、この地域の人々はほとんどが貧しい農民です。川の氾濫などの災害で大変な思いをしながらも親子、孫と、二代、三代にわたり、皆で協力して工事費用を約50年にわたり出し続け、この壮麗な建築が生まれたのです。歓喜院が人々の心の拠り所となっていたことが分かります」

そして、完成から約240年後の2003年から約7年間かけて大修理が行われ、歓喜院聖天堂は、建立当時の美しさが蘇った。

斎藤実盛像

鈴木住職はこう続ける。

「北側の彫刻には、2人の女神様“吉祥天”と“弁財天”が、双六(サイコロを使うボードゲーム)をしている場面があります。その様子を吉祥天の夫である毘沙門天が、そばに邪鬼(祟りをする鬼)がいるのも気付かず、夢中で見つめています。その様子はユーモラスで、思わず笑ってしまいます。神様が人々を救うために奔走することなく、のんびりと遊んでいられる、平和な世の中であって欲しいという願いが込められているのだと思います」

歓喜院は、写真を見てもわかるように桜の名所としても名高く、ちょうど春まっさかりの今、淡い桜の色に包まれる極彩色の本殿が、一層華やぐ時期である。