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February 2021

眠りを「スキャン」

「眠りSCAN」のセンサーが設置されたベッド

医療や介護用のベッドを製造しているメーカーが、ベッドに設置し、睡眠状態を測定するセンサーを開発、高齢者向け施設の入居者の睡眠改善とスタッフの負担軽減に貢献している。

老人ホーム等の高齢者向けの施設で働くスタッフにとって大きな負荷になっているのが、夜間の見守りである。例えば、入居する認知症の高齢者が徘徊したり或いは夜間にトイレに立ったりした時に、転倒などによるけがを防ぐため、数時間ごとに巡回する必要がある。施設によっては夜8時から翌朝7時まで1人で対応するようなケースもあり、スタッフの肉体的・精神的な負担は大きい。

こうした課題の解決に取り組んだのが、医療や介護用ベッドを主に扱っているパラマウントベッドである。

同社は、ベッドのマットレスの下にシート状のセンサーを設置し、ベッドに寝ている人の体の動きを捉えることで、睡眠・覚醒・起き上がり・離床といった状態の変化や呼吸数を計測するシステムを開発した。これは「眠りSCAN」というシステムで、施設の入居者の状態を24時間・リアルタイムで把握し、起き上がりや離床の動きがあれば、スタッフルームのパソコンや、スタッフの携帯端末に通知される仕組みになっている。このシステムによって、スタッフは、見回りすることなく、必要に応じてすぐに対応することができる。

「ベッドに寝ている人に、ストレスを与えることなく睡眠状態を測定する研究の成果が、『眠りSCAN』の誕生につながりました」と同社広報部の熊谷孔治(くまがい こうじ)さんは話す。「睡眠状態の測定のために直接体にセンサーなどの機器を人に装着すると、その装置自体が人にストレスを与え、自然な睡眠状態を測定することができません。そこで、ベッドのマットレスの下にシート状のセンサーを設置し、睡眠中の身体の状態を客観的に把握するシステムを開発しました」

体に機器を装着せずに睡眠状態を把握するためには、睡眠中のわずかな体の動き、呼吸、心拍を検出できるシート状のセンサーが必要だった。開発担当者たちは、試作したセンサーを自宅に持ち帰り、毎日のように自分自身の睡眠を測定し、データを記録した。そして、蓄積したデータを基に精度の高い独自のセンサーが開発された。

眠りSCANは、2009年の発売以来、2020年9月末までに累計5万5000台販売されている。最近では、ベッドに設置されたカメラと連動し、入居者が起き上がった際にスタッフの携帯電話に映像が送信される機能なども加えられた。

睡眠パターンを正確にデータ化することは、ケアプログラムの適正化にも役立つ。

「例えば、夜間に何度も目覚めて睡眠が十分でない人に対しては、軽い運動など昼間のアクティビティを増やすといった対処をすることで、より良い睡眠に導くことができるのです」と熊谷さんは話す。

2020年5月には、SOMPOホールディングスと業務提携し、同社の介護付きホーム全居室(約1万8000室)に眠りSCANを導入、入居者の了解を得た上で、睡眠、食事、投薬、アクティビティなどのデータを収集している。こうして集められたデータを学術機関、医療機関、民間企業と共有し、介護サービスの改善、認知症の早期発見や症状改善、サプリメントや運動プログラムの開発などにつなげていくことを目指している。

「眠りSCANで蓄積したデータを活用して多くの方々へ、より快適な睡眠を提供していくことに貢献していきたいです」と熊谷さんは語る。

「眠りSCAN」のセンサーの設置位置
モニターには各入居者の心拍数、呼吸数、状態(睡眠や離床など)がリアルタイムで一覧表示される