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  • 西本喜美子さんは撮影した写真に画像編集ソフトを使い加工を行う。
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  • 西本喜美子さんは撮影した写真に画像編集ソフトを使い加工を行う。

February 2021

写真を撮るという歓び

西本喜美子さんは撮影した写真に画像編集ソフトを使い加工を行う。

熊本県在住の西本喜美子さんは、72歳から写真を撮り始めた現役写真家である。特に彼女のユーモアあふれる自撮り写真は人気を呼び、彼女のインスタグラムはフォロワー数23万を超えている。

西本喜美子さんは撮影した写真に画像編集ソフトを使い加工を行う。

熊本県熊本市在住の写真家の西本喜美子さん(92歳)は、誰もが一見して吹き出してしまうような自撮り写真を発表し続けている。彼女が写真を始めたのは72歳になってから。18歳の時に美容師になり、22歳で競輪選手に転身し、それから5年後、結婚を機に引退、3人の子供を育て上げた。そんな彼女が一眼レフカメラを手にしたのは、写真家である息子の和民(かずたみ)さんが講師を務める写真教室に通う友人から、参加を誘われたことがきっかけだった。

「最初は、写真については無知で、むしろ“仲間づくり”を目的に写真教室に参加しました。しかし、写真は保存できる点が良いなと思うようになり、毎週1回教室に通ううちに写真を撮ることが面白くなりました」と、西本さんは話す。

その写真教室は、熊本、東京、大阪など全国7ヵ所で展開されており、彼女の願い通り、年代を問わず全国に仲間ができた。仲間と外出して撮影したり、仲間が一人暮らしの西本さんの自宅に泊まりに来て撮影会を楽しむこともあった。

西本喜美子さんは撮影した写真に画像編集ソフトを使い加工を行う。

そうして誕生した西本さんの作品は、構成も衣装も小道具も、全て自身のアイデアによるものである。身の回りにある心が動かされたもの使い、写真を見た人が笑ってしまうような新たな世界観を創り続けてきた。時に、三脚を立て、対象物と適切な距離をとり、自ら写真に映り込む。彼女の自撮り写真はユーモアにあふれ、印象的である。

「自撮りを始めたきっかけは、写真教室で『自分で自分を撮影する』という宿題を出されたことです。プロのような上手な写真を撮影するのは難しいと思い、写真を見る方にとって面白い写真を撮ることにしました」

写真教室で画像編集を教わり、74歳の時、パソコンを人生初めて購入し、西本さんは編集ソフトを使い、自身で画像を加工するようになった。

例えば、手押し車を推す西本さんが車と一緒に走っている写真は、止まっている車と一緒に撮影し、どちらも走っているように加工した。西本さんが浮かんでいる写真は、彼女が座っている椅子だけを画像編集ソフトで消したものである。

西本喜美子さん

一眼レフを手にして10年、西本さんは82歳の時に熊本県立美術館分館で初の個展開催を実現した。西本さんのインスピレーションから生まれたデジタルアートは、国内の数々の写真コンテストで表彰され、さらに、2016年には写真集が出版された。

「やりたいことを、やってみる」という西本さんは、インスタグラムを知り、純粋に挑戦してみたいと思い、2018年から挑戦を始めた。写真教室でインスタグラムの使い方を習得し、自力で投稿を始めた。西本さんのインスタグラムは2021年1月時点でフォロワー数23万人を超え、海外でも話題を呼ぶようになった。

「私のインスタグラムの反響が大きくなっても、面白い写真を撮ることへの想いは変わりません。写真と出会って70代からの人生が変わりました。本当に、写真と出会って良かったです。もし寝たきりになったとしても、カメラを持って天井の何かを撮影します」

今は足腰を弱めリハビリ中だが、自宅に小さな撮影スタジオを設け、写真撮影を楽しんでいる。西本さんの写真はユーモラスなものだけではない。静物写真にも彼女の人生の豊かさが表現されている。幾つになっても、対象が自分に何を訴えているのかを追求することを原動力に、自分の知らない豊かな世界を写真で表現している。そのことを、彼女自身が楽しんでいる。どの写真からもそのことがよく伝わってくる。