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  • 今治市にある今治タオル本店
  • 吸水性が高く、肌触りも良い今治タオル
  • 太陽と海を組み合わせたデザインの今治タオルのロゴマーク
  • タオルを織る前の糸を準備する作業員
  • 今治市から眺めた瀬戸内海

September 2020

タオルの街

吸水性が高く、肌触りも良い今治タオル

瀬戸内海に面する愛媛県今治市は、日本を代表するタオルの産地である。独自の品質基準の下に生産されるそのタオルは、吸水性が高く、肌触りも良いことから、国内外で高い人気を誇っている。

今治市にある今治タオル本店

愛媛県今治市は、タオルを織る工場のほか、撚糸工場、染色工場など、200近い関連工場が集積する日本有数のタオル産地である。年間の生産量は1万1千トンほどで、国内に流通する国産タオルのシェアの5割以上を占める。中でも地域ブランドとなっている『今治タオル』は国内のみならず海外でも認知を広げている。その特徴は、柔らかさと肌触りの良さ、そして何と言っても優れた吸水性にある。

今治タオル工業組合の理事長の井上裕基さんは「『今治タオル』には、“吸水性に優れる”“裂けない” “変色しない”といった独自の12項目の品質基準が設けられていますが、中でも『5秒ルール』は今治タオルの性質をよく表しているということで有名になりました」と話す。

「5秒ルール」とは、吸水性を確認する試験で、1センチメートル角に切ったタオル片を水に浮かべて5秒以内に沈み始めるかどうかを検証する基準である。一般的な日本工業規格(JIS)の基準は60秒だというから、今治タオルの吸水性がいかに優れているかが分かる。

太陽と海を組み合わせたデザインの今治タオルのロゴマーク

瀬戸内海に面した今治市は、温暖な気候で綿花栽培に適し、また商都・大阪への海運が開けており商品の運搬が容易であったことから、早くから繊維産業が興った。タオル生産が行われるようになったのは1894年からである。今治のタオルは一般的なタオル製造と異なり、糸の状態から精錬漂白、染色を行う「先晒(ざら)し先染め」という技法が伝統的に用いられている。綿本来の柔らかさを生かすこの技法には工程上多くの水を必要とするが、市内を流れる蒼社(そうじゃ)川の豊かな伏流水がそれを可能としている。さらに、軟水でカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンが少ない水質が綿糸に優しく、風合いの良いタオルが出来上がるのである。

タオルを織る前の糸を準備する作業員

最盛期の1970年代、今治タオル工業組合には約500社のタオルメーカーが加盟していたものの、1990年代から安価な海外製の輸入が増えるにつれて倒産や撤退が相次ぎ、現在では約100社まで減った。衰退の危機にあった地域の産業を守り、今治タオルの名を再生したのが、2006年の「今治タオルプロジェクト」だった。プロジェクトでは、今治のタオルの価値は品質そのものにあるとし、まず「5秒ルール」の吸水性を始め、使用による耐性や強度など、12項目に及ぶ独自の品質基準を創設。この基準をクリアした製品に、タオルづくりの情熱と製品の優しさを表現する、太陽と海を組み合わせたデザインのロゴマークが付けられることになった。

このロゴマークを付けた「白いタオル」が、2011年1月イタリア・ミラノでの「マチェフ」展(マチェフ・インターナショナル・ホーム・ショー)や同年8月に行われた「上海国際ギフト展」で評判となって、ブランド形成、国内外の販路拡大につながった。

今治市から眺めた瀬戸内海

現在、今治タオルは、多くが国内市場向けだが、個々のメーカーでは、北米、ヨーロッパやアジア各国への輸出も展開している。「今治タオルは1社のブランドではなく、約100のメーカーが集結した地域ブランドであることが強みだと思います」と井上さんは言う。各メーカーはそれぞれに特色のあるタオルを生産しているため、ユーザーはタオルの厚みや柔らかさ、パイル地のループの長さなど、好みのものを選ぶことができる。

今治市は、本州と瀬戸内海に浮かぶ島々をつなぐ高速道路「しまなみ海道」の発着地となっており、海上の雄大なサイクリングロードを目指して国内外の多くのサイクリストが集うことで有名になった。そんな海道を走り抜け、タオルで汗を拭う時、きっと今治タオルが、その美しい自然に育まれたことを感じられるのではないだろうか。