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July 2020

熱中症を予防する

日本の夏は、気温だけでなく湿度も高いという特徴があり、海外から訪れる方にとっては厳しい暑さに感じられる。暑い環境の中で身体が上手く対応できなくなると、「熱中症」と呼ばれる状態になる。日本では毎年多くの方が熱中症になるが、熱中症は適切な対応で予防することができるため、ここで詳しい情報を紹介したい。

熱中症

人体は熱を作ったり、放出したりして一定の体温を維持している。体温が上昇すると、人間は皮膚下の血流を増加させるために皮膚下の毛細血管を拡張させ、熱を体外に逃がす。また、発汗や汗を蒸発させることでも体温調節する。しかし、高湿度の環境下では、汗が十分に蒸発せず、熱中症を引き起こす。さらに、皮膚下の血管の血流増加で、脳や他の重要な臓器への血流が減少したり、発汗で体内の水分や塩分が減少すると、熱中症となる恐れがある。体が体温の上昇を調整できなかったり、何らかの緩和措置を行わなければ、めまい・失神・筋肉痛・こむら返り・手足のしびれ・頭痛・吐き気・だるさ・力が入らない・意識障害・けいれん等、様々な症状を引き起す。したがって、暑い環境や運動をした際に体調が悪くなった際には熱中症を疑い、次のような措置を行う必要がある。

応急処置措置

熱中症は放置すると生命の危険に直結する。熱中症を疑う症状がある場合は、すぐに「応急処置」を行う必要がある。(1)まず、患者を風通しのよい日陰や、クーラーの効いた室内など涼しい環境に避難させる。(2) そして、上着を脱がせ、ベルトやネクタイを緩めるなどの処置を行い、意識があれば、冷たい水やスポーツドリンクを飲ませる。濡れたタオルを皮膚に当てたり、首の付け根の両脇、脇の下、太腿の付け根の前面などに冷えたペットボトルや氷を当てることも効果的である。(3) 意識障害など症状が重い場合や自力で水を飲めない場合は、すぐに救急車などで医療機関に搬送とともに、その到着前から、体を冷やすあらゆる措置を行うことが重要である。

熱中症を引き起こす要因

熱中症を引き起こす要因は主に3つある。(1) 第一に、気温や湿度が高い、風が弱い、日差しが強い、急に暑くなった日、またエアコンが無い部屋など、環境に関する要因。(2) 第二に、高齢者や乳幼児、肥満、糖尿病や心臓病などの持病、下痢やインフルエンザによる脱水状態など、体に関する要因。(3) 第三に、激しい運動や長時間の屋外作業など、行動に関する要因である。

特に留意すべきは、熱中症で緊急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者が約半数を占めていることである(消防庁の統計による)。高齢者は体内の水分量が少ない上に、加齢によって暑さやのどの渇きに対する感覚機能や暑さに対する体の調整機能が低下していることが、原因として挙げられる。

熱中症対策(4つの対策)

熱中症は死に至る危険性もあるが、適切に対策をすれば防ぐことができる。具体的にはまず、「暑さを避ける」ことである。そのために、(1) 外では日陰を選んで歩く、涼しい服装を着る、日傘や帽子を使う、(2) 室内ではエアコンで室温を調整するなどの対策を行う。また、(3) のどが渇いていなくてもこまめに水分を補給することである。個人差はあるが、食事に含まれる水分を除き、1日に摂取すべき水分量は1.2リットルが目安とされている。

また、熱中症は、急に暑くなる日にかかることが多い。これは、暑さに体が慣れていないためである。そこで、(4) 暑くなり始めた時期から、やや暑い環境で、ややきついと感じる強度で、ウォーキングなどの運動を毎日30分程度行うと、2週間程で暑さに慣れ、熱中症にもかかりにくい体にすることができる。

日本の政府の取組‐「暑さ指数」(WBGT)の情報発信‐

日本の政府は様々な熱中症予防対策を実施している。特に、環境省は「環境省熱中症予防情報サイト」(https://www.wbgt.env.go.jp/) を通じて、全国840地点における「暑さ指数」(WBGT)や、熱中症に関する様々な資料などの情報を発信している。WBGTとは、人体に与える影響の大きい気温、湿度、輻射熱(ふくしゃねつ)、の3つを取り入れた、暑さの厳しさを示す指標(単位は気温と同じ「℃」)で、段階に応じてどのような対策をとるべきかが示されているため、熱中症予防の参考にしやすい。特に、WBGTが「28℃」を超えると、熱中症患者の発生率が急増するので要注意である。

熱中症予防情報サイトは英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語でもご覧いただけるので、本邦在留外国人や訪日外国人の方々などにも活用いただきたい。

出典:環境省リーフレット「熱中症 ~ご存じですか?予防・対処法~」
出典:環境省リーフレット「暑さ指数計の使い方」(https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_pr.php