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  • 2018年にスペインで開催された世界空手道選手権大会の団体「形」で優勝した日本男子チーム
  • 2018年にスペインで開催された世界空手道選手権大会で、女子「組手」 (+68kg級) で準優勝した植草歩選手(右)
  • 2019年に東京で開催された国際大会で、男子「組手」(-84kg)で優勝した荒賀龍太郎選手(右)
  • 2019年の全日本空手道選手権で、女子「形」で優勝した清水希容選手

June 2020

心と身体を鍛える空手

2018年にスペインで開催された世界空手道選手権大会の団体「形」で優勝した日本男子チーム

身を守る武術として琉球で生まれた空手は、1920年代以降、人格形成を重んじる武道として日本全国に広がった。第二次世界大戦後、世界中に普及し、2021年夏に東京で予定されているオリンピックにおいて初めて正式種目として採用されている。

2019年に東京で開催された国際大会で、男子「組手」(-84kg)で優勝した荒賀龍太郎選手(右)

日本の武道である空手道(以下、空手)は、15世紀からおよそ450年続いた琉球王国 (現在の沖縄県)で生まれた。武器を使わず、足や手で、相手を突く、蹴る、投げるなどの方法で身を守る「手」(てぃ) という琉球の武術と、琉球との交流が盛んであった中国から伝えられた中国拳法が融合し、空手が形作られたと言われている。

空手は、1920年代から1930年代にかけて沖縄の空手家が東京や大阪に渡って広めた。空手の稽古は、当初相手の動きを想定して、突き、蹴り、受けなどの技を一連の流れで表現する「形」(かた)が中心であったが、空手が普及する中で、実践的な対人稽古として、1対1で技をかけ合う「組手」(くみて)が考案された。

さらに、空手は、嘉納治五郎(1860-1938)が1882年に始めた柔道の、身体と精神を鍛えることで豊かな人間性を育むという考え方に影響を受け、人格形成を重んじる武道として発展していく。沖縄で空手を学び、東京を拠点に空手の全国的な普及に大きく貢献した船越義珍 (1868-1957)は「空手道は礼に始まり、礼に終わる」という言葉を残しているが、これは、空手が他の人を尊重する心を大切にするということを意味している。

第二次世界大戦後、形の技や組手のルールが異なる様々な流派が生まれるとともに、各流派によって日本国内外に数多くの道場が開かれ、子供から高齢者まで幅広く空手が親しまれるようになった。

2019年の全日本空手道選手権で、女子「形」で優勝した清水希容選手

「組手や形は簡単には上達しません。だからこそ、その奥深さに惹かれるのです」と、現在、8歳と12歳の息子と共に東京の空手道場に通う真藤舞さんは話す。「稽古前後は皆、打ち解けた感じですが、稽古中は、緊張感を持って空手に集中します。そうした道場の雰囲気も好きです」

彼女は4年前、海外赴任先のフィリピンで、フィリピン人の先生が指導し、生徒もほとんどが現地の人という道場で、息子2人と習い始めた。当初、運動不足解消が目的であったが、指導者の人間性も素晴らしく、すぐに空手の魅力に取りつかれた。日本に帰国後も迷うことなく、自宅近くの道場で稽古を続けることを決めた。子供たちは特に組手に熱心で、組手の試合に負けて悔しい思いをしても、決してやめるとは言わないという。

「子供の頃から長年、空手を稽古してきた道場の若者は、礼儀正しく、誠実で、自信に満ちています。試合の勝ち負けではなく、人格形成を重んじる空手から、子供たちが得られることは大きいのではと感じています」と真藤さんは話す。

2018年にスペインで開催された世界空手道選手権大会で、女子「組手」 (+68kg級) で準優勝した植草歩選手(右)

日本の代表的な流派が所属する全日本空手道連盟が加盟する世界空手連盟(WKF)には現在、200の国・地域が加盟し、競技人口は6,000万人、愛好者の総数は1億3,000万人を超すと言われる。空手の国際化とともに、各国の競技レベルも向上している。WKFが2018年にスペインで開催した「第24回世界空手道選手権大会」では、男女別で競われる形、男女別・体重別で競われる組手など計16種目の試合が行われたが、優勝者の出身国は日本、アゼルバイジャン、クロアチア、ドイツ、イラン、イタリア、ポーランド、セルビア、スペインと多彩である。

そして、来年夏に東京で開催される予定のオリンピックでは、空手が初めて正式種目として採用され、組手と形の試合が行われる。組手は、相対する2人の選手が、突きや蹴りなどの技を使い、攻防を繰り返す。有効な技を相手の頭部や胴体にコントロールしてきめることでポイントを競う。

一方、選手一人で演じられる形は、技の正確さ、力強さ、スピード、リズムなどの要素を競う。

「トップ選手の形は、流れの美しさと迫力が凄いです。人間はこんなに機敏な動きができるのかと驚きます。来年のオリンピックで、世界中から集まる選手のハイレベルな技を、この目に焼き付けたいです」と真藤さんは話す。

琉球で生まれた空手道は、日本、そして世界に広がっている。