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May 2020

未来へと進む東北

復興庁統括官 石田優さん


2011年3月の東日本大震災から約9年が過ぎ、東北の被災地では人々の生活、インフラ、産業の復興が進んでいる。復興庁統括官の石田優さんに、被災地の復興の現状や取組について伺った。

東日本大震災から約9年が経ちましたが、被害の大きかった東北の岩手県、宮城県、福島県における復興の現状と政府の支援を教えてください。

大震災の直後、避難者の方々の数は約47万人でした。2020年4月時点では、約4.4万人となっています。住宅については、被災者のための公営住宅が3万戸、高台移転による住宅用の宅地に1.8万戸が完成するなどの再建が進んでいます。また、津波や地震の被害を受けた地域の道路、港湾、鉄道、農業用施設、水産加工施設などのインフラの復旧もほぼ完了しています。現在、被災地の地域経済を支える、太平洋岸の三陸沿岸を南北に通る「復興道路」と、沿岸部と内陸部を東西に結ぶ「復興支援道路」の建設が進んでいます。全570キロメートルのうち既に7割以上が開通し、残りの区間も今年度中に開通する予定です。被災地の復興は着実に進んでいます。

また、被災地では避難生活の長期化や公営住宅での新たな生活などに伴う様々な課題があり、被災者の方々の健康や生活再建に関する相談対応、日常生活の支援、コミュニティ形成の支援など多くの取組が実施されています。一方、産業の再生を進めるために、水産加工品の販路開拓、インバウンドを中心とした観光振興、農林水産品への風評の払拭などの支援も行われています。

被災地の復興を象徴する最近の事例を教えてください。

一つは、昨年2019年9月に岩手県釜石市で行われたラグビーワールドカップの試合です。試合は津波で全壊した小学校と中学校の跡地に建設された釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムで開催され、復興が進む被災地の姿を世界に発信することができました。

また、同年9月に岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園が一部利用開始しました。公園内には大震災の被害や教訓を継承するための施設も設けられています。同年12月には、宮城県南三陸町に南三陸町震災復興祈念公園が一部開園、今年秋には全面開園の予定です。

このほか、2020年3月に、福島県内で一部不通となっていたJR常磐線の運転が再開され、東京から宮城をつなぐ全線が開通したことも被災地の復興を象徴する出来事です。

福島第一原子力発電事故が発生した福島県の放射線量の状況、農林水産物の安全性、復興への取組について教えてください。

現在、福島県内の主な都市の放射線量は、日本や海外の主要都市とほぼ同じ水準になっています。また、避難指示区域は県全体の面積の2.4%で、ほとんどの地域では通常の生活が可能な状況です。

特に農林水産物は、出荷前に厳格な検査が行われており、基準値を超過したものは市場に流通することはありません。食品中の放射性物質の基準値は、コーデックス委員会(食品の安全性と品質に関して国際的な基準を策定する国際機関)が定めた1,000Bq/kgよりも厳しい100Bq/kgとしていますが、近年は基準値を超過した農林水産物はほとんどありません。

福島県では、産業の復興のために様々な取組も行われています。その一つが、新たな産業基盤の構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」です。構想では、福島県の沿岸部を中心として、福島第一原子力発電所の廃炉に関する技術や、ロボット、エネルギー、農業、医療、航空宇宙などの分野における先端的な研究開発、新たな企業の誘致を進めています。構想の一環として、無人航空機や災害対応ロボットなどのロボットの研究や実証試験が行える福島ロボットテストフィールドが南相馬市及び浪江町に、世界最大級の水素製造装置を備えた福島水素エネルギー研究フィールドが浪江町に、それぞれ、今年(2020年)3月に開所しました。

2021年夏に延期となった東京オリンピック・パラリンピックに向けて被災地ではどのような取組が行われているでしょうか。

政府は、東京でのオリンピック・パラリンピックを「復興五輪」と位置付けていましたが、延期後もその方針に変わりはありません。オリンピック・パラリンピックが復興の後押しとなるよう、被災地と連携した取組を進め、世界中からの心温まるご支援のおかげで復興しつつある姿を世界に発信します。既に、多くの被災した自治体が「復興ありがとうホストタウン」となり、当時支援してくださった国・地域と交流を行っています。また、被災地を含め全国を巡る聖火リレーのトーチの一部には被災地に建てられた仮設住宅の廃材が再利用されるほか、メダリストに授与されるビクトリーブーケも、被災地で育てられた花を中心に制作される予定です。

新型コロナウイルス感染症の収束後には、オリンピック・パラリンピックに向けて、海外からも多くの方々に是非とも被災地を訪問していただきたいです。そのために、今後、被災地の魅力あふれる自然、文化、食など幅広い情報の発信を一層強化してまいります。