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Highlighting JAPAN

 

都会の観光地と自然豊かで情緒あふれる地を結ぶ、会津鉄道

地域住民の足である会津鉄道は、福島・会津若松市〜東京・浅草間の直通列車も運行している。観光列車「お座トロ展望列車」など、ユニークな列車も多い。

福島県の西若松駅から会津高原尾瀬口駅まで、57.4kmにわたる路線を運営しているのが会津鉄道である。福島県と会津17市町村、法人、個人の出資による第三セクター方式となっており、野岩鉄道、東武鉄道との相互乗り入れによって、観光名所として名高い栃木・日光や東京・浅草とも乗り換えなしで往来できる。西若松〜会津高原尾瀬口の標高差はおよそ500mにも及び、季節の移ろいと共に市街地、田園地帯、山間と様々な景色を楽しめる。

個性的な駅が多いのも特徴で、例えば芦ノ牧温泉駅は猫の「らぶ」が駅長を務めている。ホームのベンチでの列車のお迎え、駅の外の巡回といった業務をこなしており、同じく猫の施設長「ぴーち」共々ファンが多い。また、湯野上温泉駅は日本国内でも珍しい茅ぶき屋根の駅舎を構えている。その風情あるたたずまいは、かつての宿場町としての町並みを残し、茅ぶき屋根の住居が建ち並ぶ「大内宿」の玄関口にふさわしい。このほか、塔のへつり駅から程近くにある100万年以上にわたって浸食と風化を繰り返した奇岩が連なる「塔のへつり」など、途中下車して楽しみたいスポットも多く存在している。

会津鉄道の魅力を満喫するなら、「お座トロ展望列車」がおすすめである。“お座敷”と“トロッコ”を名前の由来とするこの列車は、展望席とお座敷席を備えた車両と、トロッコ席のみの車両という2両編成で運行されている。展望席は通常よりも高い位置にリクライニングシートを備え、ゆったりと景色を楽しめる。お座敷席は、椅子に座るように足を下ろしてテーブルが囲める掘りごたつ式である。冬期はテーブルに布団を掛けてヒーターを入れ、実際のこたつとしてその心地よさが体感できる。トロッコ席は春から秋まで窓がない状態で走るため、会津の澄んだ空気と美しい自然を臨場感たっぷりで味わえるのが魅力である。これら3タイプの座席は購入時に選ぶことができる。

観光列車らしいサービスの一つが、鉄橋の上のビュースポットでの一時停車である(※冬期は徐行のみ)。芦ノ牧温泉南駅から湯野上温泉駅の間では2箇所、湯野上温泉駅から塔のへつり駅までには1箇所と計3箇所で、若郷湖や深沢渓谷、阿賀川などが眼下に広がる絶景を楽しめる。また、芦ノ牧温泉駅から湯野上温泉駅の間にある3箇所のトンネルで上映される、「トンネルシアター」もユニークである。車両にプロジェクターを備えており、トンネル壁面にアニメーションを映し出すもので、小さな子供がトンネルの暗闇とごう音でも怖がることなく楽しめるように、との思いで導入されている。

「常にお客様を楽しませる仕掛けを考えています」と語るのは、会津鉄道総務企画部の営業課長、渡部浩二さんである。「東京へアクセスしやすい会津鉄道ですが、沿線に住む人々が減少傾向だったため、魅力のある観光列車が必要だったのです。乗客数を伸ばすために導入したものですが、お陰様で多くの方からご好評いただいております。冬には日本酒飲み放題の『ほろ酔い列車』、夏にはビール飲み放題の『ビール列車』といった企画列車も行っています。春の『お花見列車』も人気ですので、是非多くの方に利用していただきたいと思います」と、渡部さんは言う。都会と自然をつなぎ、歴史的スポットも楽しめる会津鉄道は、おもてなしの心と共に今日も会津の地を走っている。