Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan December 2018 > 驚きや感動を生み出す、日本のエンターテイメントとそのホスピタリティ

Highlighting JAPAN

 

 

いつ来ても楽しい、毎日来ても飽きない公園に

「ふなばしアンデルセン公園」は千葉県船橋市の都市公園であるが、世界中の口コミが集まる旅行コミュニティサイトで人気ランキング上位に何度も選ばれた。同園の運営課主幹の藤田司さんに人気の秘密を尋ねた。

千葉県船橋市が姉妹都市オーデンセ市(デンマーク王国)の協力で、童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンの名を冠した公園を開設したのは1996年である。以来20年以上市民に愛されてきた同園は、ここ10年ほどで入園者数が2倍近くに増え、旅行コミュニティサイトの人気ランキングで国内のテーマパーク部門3位に選ばれた2015年には前年比約1.4倍に急増し、90万人を超えたと藤田さんは言う。

「確かにその数年前から海外からのお客様が増えたと感じていました。ただ、当園には海外の方に向けた特別な施設はなく、何かが特に人気というより、園内の5つのゾーンを自由に楽しまれているようです」

5つのゾーンとは、子どもから高齢者まで様々な楽しみ方ができるよう特色付けした区域のことである。約38haの広い敷地には、アスレチック施設を中心に体を動かして遊べる「ワンパク王国ゾーン」、アンデルセン像、風車、オーデンセ市の紹介を行う童話館を含め、アンデルセンの生きた時代が体感できる「メルヘンの丘ゾーン」、版画や陶芸など多様なワークショップが開かれる「子ども美術館ゾーン」、日本の伝統的な自然の風景を模した「自然体験ゾーン」、アンデルセン童話をイメージした建物や遊具を置いた「花の城ゾーン」がある。

特に姉妹都市への敬意から、できる限り現地と同等かそれに近い体験ができるよう努力している。アンデルセン像はオーデンセ市にある立像の複製許可をもらって製作し、風車は現地の職人を招いて完成させた。そのほか園内各所の建物や体験プログラムの多くが同じ方針で提供される。

「当園は市の施設ですから姉妹都市との友好と同時に、誰でも気軽に楽しめて満足してもらえる体験が大切なんです。このため市が整備した5つのゾーニングと貴重な施設を利用し、毎週イベントを開催し、園内の各所に花を植えて美しい景色を楽しんでもらい、毎日ワークショップを行って美術に親しむ機会を作るなど、運営面でも充実を図っています」

例えば藤田さんも担当する花の整備では、絵になる風景、写真映えするイメージも意識して植栽すると言う。絵や写真で同園の美しさを持ち帰ってもらえば、また行こうと思ったり、知人に勧めたりするきっかけになるからだ。更に季節ごとに花を楽しむイベントを行い、それ以外も季節の花が毎月咲くよう手入れをし、花好きな人の興味を引くように珍しい品種や今年の新種も交えるなど工夫を続けている。

「子どもの頃に思い切り遊び、恋人とのデートで訪れ、結婚後は家族と一緒に過ごし、高齢になったら花を眺めつつ散策するなど、いつ誰が来ても楽しい、毎日来ても飽きない公園が目標です」

こうした普段着のホスピタリティーが喜ばれ、訪日客にも評価されたのだろうと藤田さんは考えている。同園の2006年と2016年の入場者調査結果を比べると、「満足」「とても満足」の合計が約1.7倍、うち「とても満足」は4倍近くに増加し、月別入園者数・年代別利用者数も満遍なく増えた。いつ誰が来ても楽しい公園という目標を実現しつつある同園は、訪日客も気軽に楽しめる公園と言える。