Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan June 2017 > トピックス:PKO25周年

Highlighting JAPAN

南スーダンの「平和と結束」を支える、日本のPKO活動

1992年6月に国際平和協力法(PKO法)が公布されてから25年、日本は国連を中心とした国際平和のための努力に対し、より積極的な役割を果たしていくため、「国際連合平和維持活動」、「人道的な国際救援活動」及び「国際的な選挙監視活動」への協力を中心に、本格的な人的・物的協力を行ってきている。実際、自衛隊は、1992年のカンボディア停戦監視要員派遣以後、モザンビーク、ゴマ(現コンゴ)、ゴラン高原(イスラエル、シリア)、インドネシア、パキスタン、東ティモール、ヨルダン、ネパール、スーダン、ハイチ、そしてこの記事でご紹介する南スーダンといった国や地域で14の国連平和維持活動(国連PKO)や難民救援活動などに従事している。

2016年1月16日、長引く内戦で荒廃した南スーダンの首都ジュバで、2011年の独立後初となる全国スポーツ大会が開催された。大会のテーマは「Peace and Unity(平和と結束)」。南スーダン政府はこの記念すべき日を「National Unity Day(結束の日)」と定め、同国の未来を託した。大会には全国9都市から男女約350人の選手が参加し、同23日まで熱戦が繰り広げられた。

この全国スポーツ大会開催の陰には、日本の国連PKO部隊の尽力があった。

南スーダンでは、教育・保健などの基礎的行政サービスにさえ十分な予算が確保されておらず、大会が予定されていた3つのグラウンドは穴だらけ。試合中に選手がケガをする危険もあり関係者は頭を悩ませていた。

この状況に、現地でODAを行うJICA(Japan International Cooperation Agency)が日本のPKO部隊「南スーダン派遣施設隊」に相談した。

相談を受けた9次要員の第3施設小隊長の髙橋義功3尉は、「メンバーたちはこの打診に奮起しました」と振り返る。日頃、宿営地内での作業を行っている彼らにとって、この任務は、南スーダンの人々に、直接、笑顔を届けることができる仕事だったからだ。

小隊メンバーは、2016年1月7日~15日の9日間にわたって、大会会場のひとつである「ブルクグラウンド」のコース整備にあたった。

「スポーツは平和と団結の象徴です。私たちが整備したグラウンドが、南スーダンの人たちに長く愛される施設になるように丁寧な仕事をしようと、隊員たちと話し合いました」と、髙橋小隊長は語る。

日中は50℃を超える過酷な環境の中、隊員は手作業で直線用コンクリートブロック200個、曲線用コンクリートブロック1000個を一つひとつ埋め込み、長く使える400mトラックの内周を完成させた。

大会の開会式でスピーチを行った南スーダン政府高官の一人は、「いま、われわれは平和と結束を最も必要としている」と述べた。南スーダンの国旗を手に選手たちが入場行進した際には、涙する閣僚もいたという。異なる地域や民族出身の選手が集まり、フェアプレー精神で試合を行うことで、南スーダンが一つになれることを国民に呼びかけたいという、政府の切実な思いがあった。大会開催は、南スーダンにとってひとつの悲願だったのだ。

第3施設小隊は他の任務に当たっていたため観戦することはできなかったが、セレモニーで和太鼓を披露した他の隊員から、「選手たちが、出身地域や民族の違いを超えてひたむきにプレーしていた」と聞き、喜びを分かち合った。

高橋小隊長は語る。

「2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。このグラウンドから南スーダン代表となった選手たちが、東京で活躍する姿を想像して、今からワクワクしています」

安倍総理は、今年1月の所信表明演説でこの支援活動に触れ、「隊員たちが造ったのは、単なるグラウンドではありません。平和を生み出すグラウンドであります。自衛隊の活動一つひとつが、間違いなく、南スーダンの自立と平和な国づくりにつながっている」と述べた。そして、「世界の平和と繁栄のため、皆さん、能(あた)う限りの貢献をしていこうではありませんか」と呼びかけた。

国連PKOに参加してから25年、日本の国際社会の平和と安定に対する貢献は今後も続いていく。