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Highlighting JAPAN

世界が注目するラーメンブロガー

ラーメンブロガーとして世界から注目されるブライアン・マクダクストン氏を紹介。

午前中ですでに5杯目となるラーメンをすすりながら、ブライアン・マクダクストン氏はカメラに向かって「つけ麺」について語っている。それを見ているのは、ラーメンブロガーである同氏のYouTubeのチャンネル『ラーメン・アドベンチャー』を視聴する数千人のファンたちだ。

マクダクストン氏とラーメン仲間は、東京・新宿の公園で開催中の『大つけ麺博』における2週目初日のイベントに参加するために集まった。10月に4週間以上にわたって開催されたこのイベントは、ラーメン愛好家たちが、つけ麺専門店20店とラーメン専門店20店の中からチャンピオン店を決定するというものだ。マクダクストン氏は仲間の助けを借りて、40杯ほぼ全てを完食し、そのレビューを書いた。

「ほんの数年前までは、ラーメンイベントと言えば『東京ラーメンショー』しかありませんでしたが、今は日本全国でいろいろなラーメンイベントが開催されています」とマクダクストン氏は言う。「こういったイベントで、ラーメン店は普段お店で提供しているラーメンだけでなく、特別なイベント用のラーメンを披露します。(こうしたイベントも)ラーメンの持つ別の醍醐味でもあります」

マクダクストン氏は、ますます洗練されていく日本のラーメン界で、尊敬を集める有名ブロガーだ。日本のラーメン界は、より優れたラーメンを絶え間なく求めている。新しいラーメンはラーメン専門誌やテレビ、そして特にソーシャルメディアで盛んに紹介されている。

マクダクストン氏は、2006年にアメリカ西海岸のサンフランシスコから来日した。2008年に初めて美味しいラーメンを食べたことがきっかけとなり、ラーメン専門ブログを開設し、その後YouTubeのアカウントも開設した。マクダクストン氏のブログは現在、世界中にファンがおり、常時数万件のアクセスを集めている。例えば、ミシュランで一つ星を獲得したラーメン店『蔦』についてのマクダクストン氏のレビューは、約200,000件のアクセスを獲得している。そのアクセスの半数が海外からであり、ラーメン店ランキングに関する記事へのアクセス数の多さは、日本を旅行する時に、忘れられないラーメン体験をしたいと考えている読者が大勢いることをうかがわせる。

今、どのようなラーメンが人気かを尋ねると、マクダクストン氏は次のように答えた。

「僕がブログを始めたばかりの頃は、つけ麺ブームが始まった頃で、東京に次々とつけ麺専門店が開店していました。それから、小さなブームがいくつもありました。その中でも代表的なのが、軽いコクと洗練されたスープを好むトレンドです。例えば、今日のイベントに出店している『志奈そば田なか』が代表的な例です。魚介を使った軽いコクの塩ラーメンは最高で、塩の風味が絶妙です」

『志奈そば田なか』は、世界中の飲食店関係者や料理愛好家たちの想像力を掻き立てる職人的なラーメン店だ。「志奈そば田なか」の特徴は、旨味たっぷりのスープに特別な調味料とトッピングをブレンドした絶妙な組み合わせにあり、その愛情を込めた工夫は、半熟卵だけでも「目が丸くなるくらい」の美味しさである。ラーメン・アドベンチャーの視聴者が言う通り、(おいしいラーメンを食べている時に)マクダクストン氏の目はしばしば丸くなるのだ。

「昔はラーメン屋さんと言うと、店内が雑然として汚くて、女性が一人で入りたいと思うような場所ではありませんでしたが、今はイメージが変わっています。例えば、『志奈そば田なか』は女性の間でも超人気店で、店員の多くが女性です。今はラーメンを食べることが、一種のファッションなのです」とマクダクストン氏は言う。

マクダクストンはラーメンに関するメディア活動以外に、子供向けの英語劇団にも関わっている。「劇団は年間を通して日本全国を回るので、僕はいろいろなラーメン屋のレビューを書くことができます。『ラーメンデータバンク』や『食べログ』などのグルメサイト、ラーメン屋さんの店長、そして僕のような大のラーメン好きの人たちから、ラーメン店を推薦して頂いています」とマクダクストン氏は言う。

マクダクストン氏はラーメン好きから高い評価を受けている、辺鄙な場所のラーメン屋を徒歩、またはバイクでしばしば訪れる。

「遠くのラーメン屋さんまで出かけるのは『かっこいい』冒険です。日本には独自のラーメン文化を持った小さな町があります。例えば、広島県の尾道には地元のスタイルにこだわるお店が30軒から40軒あり、豚の背脂がたっぷり入った醤油ベースのラーメンが特徴です。尾道市は海沿いの小さな町で、すばらしいラーメン文化を持った土地です。尾道のラーメン目当てに車で一時間以上かけて来て、お店に並ぶ人たちがいます」とマクダクストン氏は言う。

マクダクストン氏は毎週、ラーメン店を2軒ずつ紹介しているが、時には10軒におよぶこともある。

「サイトの人気が高まり始めていた数年前に、海外の飲食店経営者の方たちが僕に注目し、僕を雇って、ラーメン屋に連れて行ってほしいという依頼を受けるようになりました。僕はこのサービスを一般の観光客にも広げました。僕のラーメンツアーは、様々なラーメンを試したい短期滞在の旅行客には最適です」

マクダクストン氏はテレビにもレギュラー出演しており、昨年は優勝賞金300万円を競う一風堂ラーメン選手権の審査員も務めた。マクダクストン氏の著書『ブライアンが選ぶ東京の美味しいラーメン屋50店』は売れ行き好調だ。

来日して10年が経過した今でもマクダクストン氏はラーメン一筋で、パンやビールの消費をカットする食生活を堅持しているが、彼の美味しいラーメンへの飽くなき探求が衰えを見せる気配は全くない。

「ラーメンの最大の魅力は、バラエティーに富んでいるところです」とマクダクストン氏は言う。「同じ味ばかりでは飽きてしまいます」