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Highlighting JAPAN

熱気球が舞う佐賀の空

佐賀インターナショナルバルーンフェスタは国際的に人気を集めている。

九州の北西部に広がる佐賀平野は古くから稲作の盛んな土地である。その面積は約700平方キロメートルで、佐賀市などの市街地を除けば、今でも見渡すかぎりの稲田が広がっている。この佐賀平野を舞台に毎年10月、国際的な熱気球の大会「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」(以下、バルーンフェスタ)が開催されている。

 バルーンフェスタは1980年に14機の熱気球が参加して初開催された。年を重ねるごとに規模が大きくなり、ここ数年は世界各地から約100機の熱気球が参加し、日本中から約80万人もの観客が集まるようになっている。これほどの参加機数と観客動員数を誇る熱気球の大会は、日本国内ばかりでなく他のアジア諸国にもない。

「稲田には高い建物など障害物がありませんし、刈り取りの終わった後、秋から冬にかけてであれば、農家さんの協力もあり、稲田で熱気球の離着陸もできます」と佐賀市経済部の杠精士郎氏は言う。「さらに佐賀平野の南には九州最大の湾、有明海が広がり、北には天山と脊振山という1,000m級の山がそびえています。海を渡ってくる風と山から吹き下ろす風がぶつかるため、佐賀平野上空の風の流れは複雑ですが、それが熱気球競技には絶好の条件を生み出しています」

 熱気球には飛行船のような推進器はないが、バスケットに搭載したバーナーで球皮(エンベロープ)と呼ばれる袋の中の空気を暖めたり、冷ましたりすることで機体を上げ下げできる。風は高度によって方向や強さが異なるので、熱気球を上下させることで行き先をコントロールするのである。競技では、地上のターゲットにマーカーという砂袋を落とすなど、さまざまなタスクをこなしながら、決められたゴールを目指す。そのため、複雑に吹く風をいかに読むかが何よりも重要である。

 「現在、佐賀市内には、日本では非常に珍しい高校や大学の熱気球部なども含め、熱気球のクラブが約40もあり、多くの人々が熱気球を楽しまれています」と杠氏は言う。「地元の人々も気球の浮かぶ姿を目にする機会が多いため、大会の準備や運営には市民もボランティアとして積極的に関わっていただいています」

 バルーンフェスタには海外からも多くの選手や関係者が訪れるが、その大半は一般市民の家庭にホームステイしている。また、選手や関係者が集う競技本部には、米や野菜、肉や海産物など、佐賀の特産品を用いた手料理も振る舞われる。こうしたもてなしが海外から参加した人々にも喜ばれており、「佐賀の大会は素晴らしい」と絶賛されている。

 今年の大会は、10月28日から11月6日まで、10日間にわたり開催され、熱気球のオリンピックとも呼ばれる熱気球世界選手権がメイン競技となるため、「2016佐賀熱気球世界選手権」の名称で開催される。期間中には世界選手権だけでなく、ホンダグランプリの最終戦が開催されるほか、動物のキャラクターをかたどった変形気球の祭典「バルーンファンタジア」や夕闇の中に花火や音楽と共に色とりどりの熱気球がバーナーの火で浮かび上がる「夜間係留(ラ・モンゴルフィエ・ノクチューン)」など、さまざまなイベントも予定されている。参加機数は187機を予定、観客動員数は120万人と、いずれも過去最高になると見込まれている。

「佐賀の人々は、稲刈りが終わると誰もがバルーンの季節がやって来たと感じる」と杠氏は言う。「佐賀のバルーンフェスタを今後も、地域で親しまれ、愛され、そして人々が誇りとするイベントとして、発展させていきたいです」