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Highlighting JAPAN

たくさんの伝えたいこと

スウェーデン出身のオーサ・イェークストロムさんは10代の時に漫画に恋をした。その後は漫画家、ストーリーテラーとして、漫画の着想からストーリーの決定、絵を描くことまでをこなした独自の作品を母国と日本で出版した。

一般に「manga」と呼ばれる日本のコミックの人気は、mangaを生んだ島国日本の海岸を大きく飛び越え、世界中で着実に名声とファンを獲得し続けている。今では日本人以外の読者や愛好者がたくさんいる漫画だが、スウェーデン人の漫画家、オーサ・イェークストロムさんは自分の漫画の創作、出版まで実現した。さらにはここ日本で漫画の制作に励んでいる。

「漫画家になるなんて夢にも思いませんでした」。イェークストロムさんは言う。しかし、10代の時にアニメ『セーラームーン』を見ていた時のことを振り返り、「女の子向けのアニメを見たのはその時が初めてで、とても大きな影響を受けました」と話す。10代で漫画を読んだり描いたりすることが好きになると、英訳版を求めてストックホルムの都心部に郊外から通うようになった。当時はスウェーデン語に翻訳された漫画がなかったからだ。

イェークストロムさんにとって漫画はまさにうってつけだった。「私は物語を作ることも絵を描くことも大好きでしたが、漫画と出会って『わぁ、どちらも同時にできるんだ』と初めて知りました」。当初は進学する予定だったが、1年の休みを取ってスウェーデンのコミック専門学校に通い、趣味に打ち込んだ。この決断が大きな転機となる。1年後には依頼が来るようになり、お金を得ながら描くようになったからだ。それ以来、後ろを振り返ることはなかったという。

イェークストロムさんはスウェーデンで日本スタイルの漫画を出版した。デビュー作は少女漫画『さよならセプテンバー』(全3巻)で、約700ページの同作品は非常に私的なものだという。「漫画家を目指していた私自身の生活から着想を得ていました」。

何度か日本を訪れた後、イェークストロムさんは日本語の勉強に全力を注ぐため、2011年に東京に移り住んだ。そして語学学校に1年間通ってからグラフィックデザインの専門学校に入学した。グラフィックデザイナーとして働くことも考えたが、日本の大手出版社KADOKAWAから漫画を出版することが2014年に決まった。

現在はフリーランスの漫画家として活動し、4コマ漫画を制作している。これらの4コマ漫画は『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』として2015年に1巻と2巻が出版された。同作では、日本に住むスウェーデン人女性としての示唆に富んだ考察や体験を伝えている。

ある4コマ漫画では、外国人がコンビニストアで売っている3角形のおにぎりの包みに四苦八苦する。ほとんどの日本人にとって包みを開けるのは簡単かもしれない。だがイェークストロムさんによると、あのような複雑な包み方は母国には存在しないせいか、日本在住の外国人の友人たちは最初にその手順に苦労するという。この作品に収められているのは、どれもイェークストロムさんが伝えたいストーリーだ。「大きな違いについてはみんな知っていますが、日常の中にある小さな事に向き合う時が一番面白いのです」。

漫画の作者であり読者でもあるイェークストロムさんは、コミックは子どもだけのものという欧米の一般認識に反し、日本の漫画は複雑なテーマも扱っており大人も楽しめるのと見ている。「あらゆる種類の漫画が存在します。漫画は映画のような芸術形式なのです」。イェークストロムさんはそう指摘する。そして外国人にとっての漫画と日本のサブカルチャー全般の魅力は、興味の対象が何であろうと、それを満たしてくれるものが必ず存在するということだ。

しかし当面は、『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』の3作目に注力する。彼女は言う。「日本で出版することは子どもの頃の夢でした。その夢が実現しただけでも私には十分です。でも、もちろん日本に住み続けたいし、これからもずっと描き続けたいです」。イェークストロムさんは、もっとドラマチックで物語性のある漫画を描くことを考えているという。