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Highlighting JAPAN

コスプレイヤーたちのオリンピック

13年の歴史を持つコスプレを通じた国際交流イベント「世界コスプレサミット」は、究極のコスプレ世界一決定戦であり、世界中のコスプレイヤーたちが開催地名古屋を目指している。

コスプレとはコスチューム・プレイを語源とする言葉で、漫画やアニメなどのキャラクターに扮する行為のことであるが、日本のみならず、世界各国で様々なイベントが行われている。

「世界コスプレサミット」は2003年にスタートし、参加国の国内予選で優勝したコスプレイヤーが愛知県名古屋市に集い、世界一を決める世界最大のコスプレイベント。2015年の参加国は28カ国・地域に上り、世界中のコスプレイヤーたちが憧れ、各国メディアによって大きく取り上げられるまさにコスプレ界のオリンピックといえる。同イベントの歩みと現状について、世界コスプレサミット実行委員会の小栗徳丸氏に話をうかがった。

第一回開催は、当時名古屋ローカルテレビ局のプロデューサーだった小栗氏が担当していたミニ番組において、コスプレ文化を取り上げたことがきっかけだった。「番組作りのために調べたところ、国内よりも海外のほうが、コスプレが盛んな現状を知り、フランス、イタリア、ドイツからコスプレイヤーを招待し、日本のコスプレイヤーと座談会をしたのです。言葉は通じなくても、好きなキャラクターの名前は同じ。それだけで場がとても盛り上がりました。それが第一回世界コスプレサミットとなったのです」。

2005年には、愛知県で開催された日本国際博覧会(愛・地球博)でコスプレチャンピオンシップを行い、これがロイター通信やAP通信の報道で広く海外に広まり、多くの国から大使館を通じて問い合わせや参加表明があった。その影響もあり、2006年からは外務省、国土交通省が後援、2009年には名古屋市の後押しで実行委員会が設立された。

その後も毎年規模は拡大し、2015年は各国累計196万人以上が世界コスプレサミット関連のイベントに参加している。世界コスプレサミット2015オープニングセレモニーでは、遊園地のラグーナテンボス内に人気漫画『ONE PIECE』に登場するサウザンド・サニー号を浮かべ、その前で各国代表が集い、テープカットが行われた。こうしたイベントは参加者たちによってリアルタイムでSNSなどを通じて全世界に発信され、より多くの人々に興奮と感動が共有された。

また、2013年に発足した日本の学生主体の「WCSおもてなし学生実行委員会」は、サミット参加者とボランティアの学生が大会中ペアになり、コスプレの手伝いから通訳までサポートしており、深い友情がはぐくまれる国際交流の機会となっている。

「ロシアは15都市、中国では26省で約一年かけて国内予選が行われています。フランスのジャパンエキスポには、ヨーロッパ中のコスプレイヤーが集結します」と小栗氏は盛り上がりを見せる海外のコスプレブームについて説明する。「日本のアニメや漫画は質が高く、感情移入しやすいキャラクター設定が特徴です。それがインターネットの普及により気軽に世界中で視聴できる社会になったことが、海外でのコスプレブームの根底にあると思います。オンライン・オフラインともに、世界中に仲間を作れるイベントが何万もある、他に類をみない国際交流のツールがコスプレではないでしょうか」。

世界コスプレサミットは2020年までに30カ国以上いる参加待機国をゼロにすると同時に、大人数の海外コスプレイヤーたちを地方都市に分散させ、日本国内で世界大会最終予選を行うなど、地方創生への貢献も目標にしている。いまや世界共通語となったコスプレは、強力な世界のつながりとパワーを生み出していく。