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Highlighting JAPAN

遊びと創造のマーケット

世界最大の同人誌即売会、コミックマーケット。毎年夏冬と2回開催され、一会期の入場者数50万人以上、参加者も国際化という大盛況ぶりはもはや社会現象となっている。

コミックマーケット(コミケ)は1975年開催以来40年を迎え、いまや一会期3日間の入場者数はのべ50万人以上、参加サークル数約35000、コスプレイヤー数2万人以上、会期中には会場周辺で臨時列車が増発されるほどの規模に成長した。

そもそもコミケとは、漫画・アニメ・ゲームその他周辺ジャンルの自費出版同人誌の展示・頒布を目的としたイベント。漫画・アニメブームの拡大と国際化に伴い、海外からの参加者や、華やかなコスプレイヤーの増加も話題となった。知名度が上がるにつれ、企業の出展ブースも約140社と飛躍的に増えている。近年の会場である東京国際展示場の熱気と賑わいは、ニュース番組で報道されるほどだ。

同時に、スタッフのスムーズな誘導のもと、数万人もの参加者がきちんと整列して入場する様子には、国内外の参加者から「日本の奇跡」と驚嘆の声が上がる。

「コミケにお客様は一人もいません」。コミックマーケット準備会共同代表・市川孝一氏はいう。「私たち本部スタッフも、3200人のボランティアスタッフも参加者も、みな対等な同人誌ファンです。コミケをみんなで楽しみ、成功させるために、一人ひとりが主体的にコミットし、マナーを守る。当日の誘導プランも、ボランティアスタッフが事前に綿密な計測をして計画を練り、これまで大ケガにつながるような事故がないのが自慢です。大規模オペレーションのスキルは、日本の同人誌ファンたちの40年間の積み重ねなのです」。

サブカルチャーの代表格として、いまや各省庁・大学関係者からの視察や協力依頼が絶えないコミケだが、動員規模の急激な拡大による安全確保の問題、有害コミック問題によるバッシングなど、40年間の歩みには危機もあった。しかし、「年を追うごとに知名度は上がり、開催規模は拡大する一方だった」と、広報担当の里見直紀氏は振り返る。「かつて、宇宙戦艦ヤマトや機動戦士ガンダム、キャプテン翼、セーラームーンといった漫画やアニメ作品の大きなブームがあり、熱心なファンがいて、仲間やコミュニティを求めていたことは今でも変わりない」と解説する。

90年代には外国からの来場者対応部署「国際部」が立ち上がった。いまや外国人参加者は「体感として一日数千人はいる」と里見氏。日本在住1年半のタイ人女性であるSupavita Cherdchoovanitさんは2015年夏コミケから参加しているが、「タイの同人誌イベントは規模が小さく、いつか日本で本物のコミケに参加することが夢だった。人の多さは想像以上で、狙っていた同人誌は全部売切れ。でも他にも面白い同人誌がたくさん発見できた。日本にいる間は毎回参加したい」と語る。「地方や海外に住む人から『一生に一度はコミケに行きたい』なんて話を聞くと、ジーンときます」と、市川氏は微笑む。

世の中の認識とは異なり、参加者には女性も多い。「プロ・アマ問わず誰もが表現者となり、多様な作品が生まれ続ける『あらゆる表現を寛容に受け入れる器』であることがコミケの理念。このソフトパワーで、日本に共感と興味を持ってもらい、日本を好きな海外の人たちを増やしていきたい」と里見氏は語る。

市川氏は「今後の目標はもっと海外の人たちと仲良くなること」と海外のサブカルイベントと連携を深めるInternational Otaku Expansion Association(IOEA)の活動とも連携していく。「『オタクで世界平和』を目指しています。漫画を媒介に、各国に仲良い友だちが揃えば争うこともない。趣味だからこそ、真剣なんです」。