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Highlighting JAPAN

ロボットアニメの進化

日本ではこの半世紀、マンガやアニメを中心に多くのロボットが描かれてきた。日本がロボット先進国と呼ばれてきたことと決して無関係ではないロボットアニメの進化の歴史について、アニメ特撮研究家の氷川竜介氏に話をうかがった。

「人型ロボットの活躍するアクション映画『トランスフォーマー』が世界中でヒットしていますが、これはもともと日本の『ロボットアニメ』というジャンルがベースとなったものです」と語るのは、アニメ特撮研究家であり、明治大学大学院客員教授として日本アニメーション技術や文化をテーマに研究している氷川竜介氏だ。「日本らしさ」を反映した文化の核に位置づけられるという、日本のロボットアニメの変遷について、氷川氏に解説していただいた。

日本でロボットアニメが誕生したのは今から約半世紀前。1963年に手塚治虫原作の『鉄腕アトム』がTVアニメ初の作品として登場し、同年中には横山光輝原作の『鉄人28号』が続いた。現在年間200タイトルを越えるテレビアニメの隆盛の起点は、この2本の「ロボットアニメ」だった。アトムは等身大で人のような意志をもつ「自律型ロボット」。一方の鉄人は巨大でリモコンにより制御される「操縦型ロボット」である。この2つのスタイルは、日本の工業界を特徴づけるロボット産業の基本にもなっている。

そのロボットアニメが大きく飛躍したきっかけは、1972年末に放送がスタートした『マジンガーZ』であった。TVアニメ化を念頭に永井豪が原作を描いた同作は、乗り物がロボットの頭部に合体し、人がダイレクトに操るという新たな操縦型ロボットのスタイルを開拓した。特撮作品『ウルトラマン』や『仮面ライダー』で描かれる「変身」の進化形ともなり、子どもたちの夢を叶えた。

さらに放送途中で発売された亜鉛合金玩具は、作中に倣った「超合金」というブランドを採用し、大ヒット商品となった。金属製の玩具には冷たい手触りとズッシリした重みがあり、TVアニメでこの「マジンガーZ」が悪漢を倒すため使われる飛び出す腕の必殺技「ロケットパンチ」は、スプリングとメカニカルスイッチという精密な工業技術で具現され、空想のアニメ世界と現実世界を接続したのだ。

1979年には、さらなるエポックメイキングな作品『機動戦士ガンダム』が誕生する。富野由悠季監督が中心となって開発した独自の世界観をもつ物語は、中高生以上を意識した高度な内容ゆえ、TV放送中は玩具セールスに苦戦したが、1980年に発売したプラモデルという新しい商材を得てブレイクした。今も高セールスを続ける「ガンプラ」の誕生である。

ガンダムの成功はアニメオリジナル作品を数多く生み、そこからまた次の進化が起きる。1995年には、ついに作品内容だけで勝負するロボットアニメが社会現象を起こす。それが庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』である。謎の怪物を人類の科学技術が迎撃するという物語構造は『マジンガーZ』を踏襲し、外部装甲型の人造人間であり、体内に入る操縦者の神経と精神エネルギーを接続するハイブリッド要素とバイオテクノロジーを設定に採用している。

児童向けロボットアニメの進化もまだまだ続いている。2012年放送開始の『ダンボール戦機』は小型ロボットを携帯端末でコントロールする方式を採用し、モバイル時代に生きる子どもの感覚に訴えてヒットした。

「歴史の随所に日本人が得意とする『ハイブリッド式発想』『加工改良型進化』がブレイクスルーを呼びこんでいることにも注目してほしい。精密で小型の工業製品に巨大な神が宿るという点でも、ロボットアニメは近代工業時代の神話と言えます。ロボットアニメは日本で生み出されたことに必然性があり、誇るに足るメディア芸術なのです」と氷川氏。日本のロボットアニメは、ロボット技術の発展と密接にかかわり合いを持ちながら、ともに進化を遂げてきたのだ。