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Highlighting JAPAN

ロボットタクシーによるサービス

完全自動走行車ロボットタクシーは、実用化すれば日本が抱える社会問題の解決策としても、国際社会として外国人にも住みやすい環境整備の一環としても、有力な存在になると考えられている。

過疎化が進む日本の地方では、路線バスやローカル線の縮小・廃止が進み、高齢者の交通手段が奪われている。また、介護サービス車の運転手の不足と事故の増加も深刻化している。そのような状況を変える可能性を持つとして期待を集めるロボットタクシーと呼ばれる無人走行車について、ロボットタクシー広報担当の黒田知誠氏に話をうかがった。

自動運転技術で先行するベンチャーZMPとディー・エヌ・エーが合弁会社『ロボットタクシー』を立ち上げたのは2015年5月だが、「国内外からの反響は大きく、手ごたえを感じています。ZMPが開発していたハイレベルな自動走行車の技術と、弊社のインターネットサービスのノウハウを融合させ、交通インフラにイノベーションを起こすことができるのではないかと考えています」と黒田氏は自信を見せる。

この無人走行車は、機械学習(ディープ・ラーニング)を用いた環境認識と動き予測に基づく自動運転を行う。刻々と変化する周りの環境を正しく認識し、適切に次の動作につなげることが重要だ。そのために、カメラ映像を使い多層ニューラル・ネットワークに認識対象物体を学習させる、ディープ・ラーニングを用いた認識技術を開発し、リアルタイムで歩行者や車の検知・認識を実現している。さらに複数のセンサーでの周囲監視とGPSでの位置確認を統合し、複雑に変化する環境を的確に認識し、安全で最適な走行を実現するのだ。

過疎化が進む地方では、ローカル線の廃止などにより、特に高齢者の移動手段が確保できないという問題が深刻であり、ロボットタクシーは高齢者ケアと移動手段の提供という地方創生のカギを握ると考えられている。

「バス・タクシーの業界は、50~70%が人件費と聞きます。これでは事業を圧縮しても利益は出せません。無駄にコストのかかる無稼働の車の処置に困っている場合もあります。ロボットタクシーは劇的に人件費を下げ、あぶれている車を無人で動かすことを可能にします。また、介護送迎車の運転手不足と事故の問題が深刻化しています。安価なロボットタクシーが超高齢化社会の問題解決の一助となるかもしれません」。

さらに、「ロボットタクシーが実用化されても、実際の運転手の仕事が奪われるのではなく、単純な移動を安価で提供するサービスと、会話や荷物の上げ下ろしなど有人のフレキシブルな応対という付加価値が付いたサービスとして住み分けが可能になり、利用者の選択肢が増える」と黒田氏はいう。

現在、実際の道路を走行できるかの実証実験が始まったばかりであり、「2020年のオリンピック・パラリンピックには、東京でロボットタクシーを走らせる」という目標を実現するために、ロボットタクシーのメリットを伸ばしつつデメリットを払拭する実験プロセスを繰り返し、さまざまな不測の事態が起こりかねない一般道路での安全走行を確立していく。

「東京オリンピック・パラリンピックの際には、参加国すべての言語で対応できるロボットタクシーが東京を走ることを目指しています。英語も日本語も話せない外国人が、ロボットタクシーに自分の国の言語で対応されたら、なんだか嬉しくなると思いませんか?」と黒田氏。超高齢化社会の問題軽減と、国際都市の立役者の一員として期待されるロボットタクシーの実用化に期待が高まる。